2017年のベスト

音楽のこと。

僕が音楽の探求を始めたのは、アナログレコードとComapct Disc (CD)の丁度移行期のころであったと思う。通学の帰り道の駅のレンタルレコード屋では、普及し始めたCDと共にアナログレコードもレンタルできて、わざわざ目立つアナログレコードを抱えて通学していた記憶がある。高校生のある日、初めて買ったのはブルース・スプリングスティーンのアナログレコードだった。ジャケットの存在感、レコードの針を落とすときの高揚感は忘れられない。すぐにCDの時代となり、レコードショップでアナログレコードを目にすることはほとんどなくなった。

 1990年代〜2000年代前半はCDの時代であったと思う。レコードショップを目的もなく物色するのが好きだった。山梨で暮らすようになり、国母のあたりにあった大きなレコードショップに良く立ち寄った。輸入版のCDが豊富にそろえてあり、気になったアルバムを気ままに購入し、新しい音楽と邂逅することはとても楽しいことであった。インターネットの普及とともに、通信販売でCDを購入することが普通になった。店頭で在庫を切らしている物も、マニアックな作品もインターネットですぐに検索できてボタン1つで宅配される。こんなに便利なことはない。・・・しかし気がつくとレコードショップは街から消えていった。便利なことを手に入れると、必ず失うものがあるのだということを知った。

 さらに時代は変わって、音楽配信やストリーミングの時代になった。音楽配信は便利である。発売したばかりの新譜が、自宅のデスクで試聴できる。昔、好きだったミュージシャンの古いカタログも、聴きたくても買えなかったアルバムも聴くことが出来る。月額1000円程度の料金で無限のカタログが聴き放題で、なんて素敵なサービスなんだろう。しかしこの便利さに引き替えて失ったものは大きい。

アナログレコードやCDには音楽以外の価値がある。ジャケットの雰囲気、ライナーノーツ。自分が好きなCDを、友人や好きな女の子に貸してあげる。ドキドキする。

配信で得た音楽には、いつでも聴けるのに存在感を感じることができない。ドキドキがない。

昔聴いた好きなCDが棚にあったはずだが、どこにしまったかわからない。今日は見つからなかったが、気が向いたらまた探してみよう。ある日、棚の奥から好きだったCDを発見して聴き直す。なぜか、そのCDを購入した時代のことを思い出す。

『欲しいものがすぐに手に入る』ことは便利なことではあるが、幸せなことではないのだと感じる今日この頃である。

そんなわけで、今日もapple musicとかspotifyにお金を払って新しい音楽を物色しているのだが、本当に聴きたいと思う音楽はお金を払ってCDを手に入れるようにしている。できる限り、生のライブも観に行こうと思っている。ラーナーノーツを読んで勉強する。音楽配信でいつでも聴けるのにわざわざ購入したものは、自分のベストである。いつか思い立って探して聴くこともあるだろう。

2017年に購入したもの、お気に入り。

土岐麻子『Pink』

土岐麻子のポップスが好きだ。ジャケットを見て、なぜかサイボーグ003を連想した。

Gregory Porter『Take Me To The Alley』

ヨコハマのジャズフェスティバルにやってくるという情報でグレゴリー・ポーターを知った。なんでもマービン・ゲイダニー・ハサウェイに影響を受けたシンガーらしい。聴いてみると素敵である。ダニーの娘、レイラ・ハサウェイとのデュエットは絶品だ。年齢不詳なたたずまいだが、同世代の人であることも知った。

Van Morrison 『Roll with the punches』

紙ジャケットである。ジャケットの外し具合がイイ。ヴァンさんの歌唱はいつ聴いても濃いが、さらに本作はジェフ・ベック爺とのからみが6曲もある。ヴァンのヴォーカルとベックのギターのからみ、これはもう最高なのだ。

Kamashi Washington『harmony』

この人もヨコハマのジャズフェスティバルに来るはずだった。チャンスがあればこの人のライブに行くのが当面の目標。

矢野顕子『Soft Landing』年末に購入したこのCD, おそらく今年のベストだろう。ライナーノーツを読んで、O.P.Kingというバンドの存在を知った。『悪いときは過ぎたよ、今からもっと良くなっていくんだ・・』っていう印象に残るフレーズ、唯一無二だと思いマス。『矢野顕子忌野清志郎を歌う』と同じぐらい素晴らしい。

番外編。

10月1日、好きだったRock'n Rollerトム・ペティさん危篤の情報を知った。

年上のボブ・ディランも元気だし、もっと不健康そうなキース・リチャーズだって健在だ。脳卒中を患ったニール・ヤングだって活動している。戻ってこいと祈った。

久しぶりにTom PettyのCDを引っ張り出した。『Here Comes My Girl』という曲が好きだった。昔好きだったRock'n Rollerが亡くなることは、大事なものを失った喪失感を覚える。冥福を祈る。

街のサッカーチームのこと。

山梨県の西のはずれにある小さな街で暮らし始めて10年が経過した。街には、予算が少ないなかビッグチームに立ち向かうサッカーチームがいる。その姿に共感を覚えていつからかスタジアムに応援にいくようになった。今年も8試合、ホームの小瀬での観戦に行けた。色々と印象に残る試合が多かったが、その中でも大事な試合を回想したい。

10月29日、ヴィッセル神戸戦。元ドイツ代表のポドルスキーがやってくるはずだったが、累積警告で出場停止。代わりにかつて甲府で活躍し、オランダから久しぶりにJリーグに戻ってきたハーフナー・マイクの先発濃厚だった。あいにく台風直撃という観戦には最悪のタイミングであった。こんな台風の中、観戦にいくバカがいるのか?という程の荒天であったが、チームは秋に入ってビッグチームに連勝し、春にも勝利していた神戸が相手、ここを勝てば目標であるJ1残留に向けて大きく前進できるという希望を胸に覚悟を決めて向かった。小瀬についた直後から雨足は強まり、どしゃ降り状態となった。こんな状態で負けて帰れば無駄骨だな・・と思いつつ、バックスタンドで雨に打たれ観戦した。

チームは良く奮闘していた。前半18分の救世主リンスのファインゴール、後半47分の新戦力小出と高野の活躍で二度の勝ち越し。絶対勝って帰るぞ!と思ったのもむなしく、前半33分、後半86分に赤子の手を捻るようにマイクにヘディングを決められ、2-3で敗戦した。キーパーとセンターバックのポカミスによる失点があったものの、マイク一人にやられた・・という試合。入場者数は4,692人、今シーズン最低だった。

12月2日。シーズンが終わり、街のサッカーチームは奮闘むなしく降格が決まった。マイクの今シーズンの成績を確認すると、9試合出場、小瀬のみフル出場、2ゴールはあの日あげたヘッド2発だった(表)。

思わず呟く。「ユーは何しにニッポンへ?」

 年末、街のサッカーチームは再起に向けて動き出している。最終戦で魂をみせてくれた選手たちが来年も闘ってくれそうだ。少し気持ちが落ち着いてから思った。マイクもプロだ。かつて活躍した小瀬で健在の姿を見せたことは最高のパフォーマンスだったに違いない。それから、マイクに食らった2発は「甲府の皆サン、目を覚ましてください!!」というゲキだったのだ、と。5年間、総力戦でしがみつくように残留して来たが、J1で生き残っていくためにはこのままではいけないのだと思う。マイクに食らった2発とこの試合の意義をもう一度考え直さないといけない。観客動員が伸びていないことは気がかりだ。となりの松本のチームのように、もっと観客動員を増やせないのか? そんなことを考えさせられた神戸戦は、今年観戦した試合のなかでベストの試合だった。

降格すると、クラブの資金が減る。これまで協力会員でしかなかったが、来シーズンは早々にクラブサポーター会員の申し込みを済ませた。少しでもチームの支援になりますように。マイクにくらった2発の意義を考えると自然にそういう気持ちになった。来年はもう少しホームの観戦に足を運びたい。

最後に。

この素敵なカレンダーに参加できたことに感謝!!

2018年も皆様に幸多い1年でありますように。

この記事は 2017 Advent Calendar 2017の25日目の記事として書かれました。