2020年のベスト

2020年は、大きな変化の年だった。3月からCOVID-19;コロナウイルスが蔓延し、日常や社会生活の制限を余儀なくされた。趣味にしているサッカー観戦やライブ鑑賞もストップした。4月には今まで経験したこともない緊急事態宣言が発令され、自粛生活に突入した。そんな閉塞的な状況の中でも新しい発見や光が見えたこともあった。そんな2020年を自分なりに振り返りたい。

白いKindleと黒のKindle鬼平犯科帳

 J2リーグは2月に開幕戦を1戦行い、その直後に人が集まることが危惧される状況となり、楽しみにしていた街のサッカーチームのホーム開幕戦が延期になった。台風の日にも雨に打たれながらバカみたいに観戦にいったというのに、あんな見えないちっこいヤツごときのためにスタジアムに入れないというのが腹立たしかった。サッカーのない時間は苦痛だった。その時間に何をするか?とりあえず家でできることをやるしかない。そこで、数年前に衝動的に購入したがあまり活用していなかった白いKindle paperwhiteを手にし、静かに眠っていた鬼平犯科帳を読むことにした。

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 池波正太郎の代表作、鬼平犯科帳。高校生の頃に池波作品は数冊読んでおり、新選組永倉新八を主人公にした『幕末新選組』の爽やかな読後感をよく覚えていたが、じっくり読んだのはそれ以来だった。・・・一巻を読んだだけでその魅力に虜になった。時代を超えて愛されている理由がわかった。それは、①主人公の長谷川平蔵が人情味あふれカッコイイ、②鬼平を助ける脇役の個性が光る。③盗賊たちの癖がスゴイ。ということだ。物語に登場する良いヤツも悪いヤツもみんな自分のスタイルを貫いて生き生きとしているのだ。

  • 平蔵『相手が将軍家であろうとも、もと盗賊であろうともおれにとっては変わらぬことよ』

  • 彦十『入江町の銕さんのおためなら、こんなひからびたいのちなんぞ、いつ捨てても惜しかねえ』

  • うさぎ饅頭にそっくりなうさ忠こと木村忠吾『だって、おれはもう、お前とこうしているために、亡くなったおやじの残し金もつかい果たし、親類中から引き出せるだけのものは借りつくしてしまったのだぜ』

  • おまさ『おまさは、また密偵(いぬ)になりとうございます』

  • 蛇の平十郎『なあに、盗賊改メがこわくてお盗がなるものか』

  • 蓑火の喜之助『外道の最期とは手前たちのことよ』

 これまでサッカー観戦をしていた時間を鬼平犯科帳の読書に費やした2020年の前半だった。6月27日にサッカーが再開されるまで、5巻まで読み進めることができた。サッカーが始まってからはペースがおちたが全24巻、まだまだ先は長いのでゆっくり楽しもうと思う。

 ところで、家にはいつかの忘年会のビンゴで引き当てた黒いKindleも眠っていた。いつか家族にあげようと思っていたが、本を読む気配がないので出張の時に携帯するよう自分で使うことにした。ネット環境があれば、白いので読んだ途中から黒いのでも再開できる。とても便利だ。黒い方は少しばかり世代が新しく、若干コンパクトになっている。だが白い方のほうがつるつるとした手触りが良く、持ちやすくて自分には合っている。車でもなんでも、世代が新しいからといって必ずしも良くなったりフィットするとは限らないのだなと思った。読書については、最近まであんなに文庫本Loveを語っていたのに、コロナの影響でKindle Loveに大きく傾いたと感じた2020年暮れであった。

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鬼平江戸処

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 東北自動車道の上り線の羽生パーキングエリアに、鬼平犯科帳の世界を再現した街がある。

以前からその存在は知っていたが、行きたくとも行く機会がなかった。今春、3回ほど、ここに通うことが出来たのはコロナの影響があったからだ。平常時は月に二回、電車で東京を経由して栃木県まで出張しているのだが、4月にでた緊急事態宣言を受け、人の多い東京駅をさけ車で出張先まで往復することを選択した。そして仕事帰りの東北道上りで、鬼平江戸処に寄ることができた。この街には鬼平犯科帳に登場する料亭がある。軍鶏鍋屋の『五鉄』やうなぎ屋の『忠八』、他にも色々な店や展示がある。もう鬼平の世界に浸れるだけで高揚してしまうのだが、本物の鰻や鯉平が調理している忠八の味は絶品だった。コロナがなければ、この街を訪れることができたのはいつだったのだろうか。ちょっとした幸運だった。

アニメ鬼平

https://onihei-anime.com

 『鬼平(おにへい)』のタイトルで2017年1月より4月までテレビ東京で放送された、鬼平犯科帳のアニメ版だ。サッカーのない春、Amazon Prime Videoで全13話が観れることを発見した。原作の中からセレクトされた13話だ。アニメの出来はBGMやビジュアルも全て含めてかなり良い。TVシリーズや劇場版など観たことがなく鬼平のイメージの先入観がなかったのが良かったのかもしれない。年末の執筆時点で11話までみた。一気に観ないのは楽しみをとっておくためだ。平蔵と古い友人の左馬助との友情と恋を描く『本所・桜屋敷』、鬼平を慕う女密偵のおまさを助けに行く『血闘』が秀逸だ。シーズン2の制作を願ってやまない。

 鬼平は人気作品なので、まだまだコンテンツがある。

・コミック 作画さいとう・たかを(最新刊はなんと111巻!、連載継続中)

・TV シリーズ

時間がないのとハマるのが怖くてまだ手を出していない。仕事が暇になったらいつか挑戦してみたい。

コロナのせいで、なぜか鬼平の世界に脚を踏み入れ、Kindleの良さを認識した1年だった。

ライブ鑑賞について

 ライブハウスやミュージシャンたちは今年のコロナ騒動で最も割をくらった被害者だろう。そして、タイミングが合えばライブ会場に足を運ぶのを趣味にしている私にとっても最悪の年だった。なにしろ、一度もライブを見に行けてないのだから。今年は、4月4日に斉藤和義のライブを見に行く予定だったが、コロナ騒動が直撃して延期になった。しばらくして振替公演が9月19日と発表された。楽しみに待っていたが、ライブハウスでクラスターが発生、などという暗いニュースが流れ、容易に開催出来ない状況は変わらなかった。再振替公演は2021年の9月18日と発表された。この頃にはコロナが撲滅され、音楽を楽しめる環境に復興することを心から願っている。

 コロナの影響で大きく変わったのは、会場のライブを自宅のPCで鑑賞できるLive Streamingが広まったことだ。リーズナブルな値段で、普段は行けないような場所や時間のライブも自宅で鑑賞できる。素敵なサービスだ。ライブハウスやミュージシャンたちが生き残るためにも、これは必然の方法だと感じている。今年良かったLive Streamingについては、別のページで書き残したい。2020年の暮れの今、年明けに配信される矢野顕子と、菊池成孔×UAの配信を楽しみにしている。

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サッカーの話

 異例のシーズンだった。2月に開幕戦を戦って以降、リーグ戦は中断した。緊急事態宣言が発令され、プロスポーツは止まってしまった。6月下旬にようやく無観客でリーグは再開されたが、発表されたスケジュールは厳しいものだった。42試合を消化するために真夏にも中2日、3日の5連戦が組まれているのだ。街のサッカーチームは選手を入れ替えながら戦うことを選択した。この選択は正しかったと思う。若い奴らが躍動して勝つ試合をみて、未来は明るいと何度も感じることが出来た。首位の長崎や北九州を連破し、昇格を確信し高揚していた9月だった。だが決定力不足は簡単には解決出来なかった。引き分けが多いのが響いて昇格には届かなかったが、限られた予算のなかで選手を編成し、懸命に戦い、賞賛されるべき順位だと思っている。今願うことは、今年成長した選手たちが同じ監督のもとで一つの方向に向かって来シーズンを戦って欲しいということだ。(祝!監督続投決定。)

 今シーズン、忘れてはならないのは甲府の心臓・オミの存在感が凄かったことだ。オミのJリーグ500試合出場は、なんとしてでも小瀬に見に行こうと誓っていたが、9月9日の首位の長崎との試合は平日のナイトゲームでどうしても外せない会議があった。試合当日、会議終了後に駆けつければ20時50分、10分でも現地で歴史を目撃しようと考え小瀬に向かった。駐車場からダッシュすると、試合中のはずがなぜか静かなピッチが目に飛び込んだ。入り口の係員に確認してようやく状況を理解した。その日、夜7時前後に雷雨があり、試合開始が1時間ほど遅れ、駆けつけたタイミングはちょうどハーフタイムだったのだ。記念すべきオミの500試合で、首位長崎を撃破した試合の後半を現地で観戦し、オミのインタビューを聞けたことは小さな奇跡だった。

未来少年コナン

未来少年コナン。1978年に放送された、宮崎駿の監督したアニメだ。今春、コロナの影響で制作スケジュールに影響が発生し『キングダム』の放送が延期となったため、再開までの代替え番組として未来少年コナンのHDリマスター版が放送された。

 当時まだ物心のつかない子供だった私は最初の放送を見たことは覚えているが、記憶をたどって思い出すのはロボノイドに乗ったダイス船長に追いかけられているシーンであり、ストーリーについてはほとんど記憶がなかった。まだ幼かった私には、手に汗握るSFやコナンとラナのラブストーリーよりも、同じ頃放送していたトムとジェリーのほうが遙かに面白かったのだろう。

 日曜日の深夜という時間の放送だったが、ちょうどNHKの放送がオンデマンドで見れるサービスに登録したため、一週間遅れで毎週日曜日にデスクのPCで鑑賞を始めた。昔懐かしさで軽い気持ちで見始めたのだが、見ていくうちにそのストーリーに引き込まれ、大河ドラマを見るよりも毎週の楽しみになった。

物語の舞台が、2008年に超磁力兵器が用いられた最終戦争で世界が壊滅的な被害を受けた20年後の2028年に設定されており、パンデミックが世界を襲った2020年にこの作品を見ることに不思議な感覚を覚えた。

 この作品の魅力を一つあげるなら、ダイス船長やモンスリーをはじめとする登場人物のキャラが際立っているだけでなく、ロボノイドやバラクーダ号や飛行艇ファルコといった乗り物にも個性がある所だろう。幼少期には理解が追いつかなかったストーリーや登場する魅力的なキャラや乗り物たちがこの年になってなぜか心に響いた。第18回の沈没するガンボートにとらわれていたラナを救出するシーンでは二人の絆の描き方に泣きそうになったし、最終回で用意されているサプライズも微笑ましかった。

 全26話が約半年放送され、11月に最終回を迎えたが、放送が終わった翌週のさみしさは近年感じたことのないものだった。コロナの蔓延は迷惑千万なのだが、そのおかげでこの傑作SFアニメを再発見できたことは幸運だったと感じている。

アーモンドアイ

彼女もコロナの影響を受けた一頭だった。今春、3月末のドバイ・ターフ(G1)連覇に向けて早々に現地入りしていたが、コロナの影響で6日前に中止となって無駄足となった。帰国して選んだのは5月の東京競馬場で開催されるG1ヴィクトリアマイルだった。国内の牝馬同士なら敵なしで、ここを楽勝し、次の安田記念ではグランアレグリアの鬼脚に後塵を拝したものの、秋の天皇賞ジャパンカップを連勝し、シンボリルドルフ他を抜いて史上初のG1 9勝、獲得賞金歴代No1の名実ともに歴史に残る名牝となった。そして、鮮やかにターフを去って行った。結果的には春のドバイ出走中断は幸運だった。国内で走るアーモンドアイに勇気づけられたファンはたくさんいただろうし、コロナがなければドバイや香港の国際レースに挑戦していただろうが、この大記録は生まれなかっただろう。この閉塞的な世界の中で、無観客ながら絶え間なく競馬が開催されていたこと、そしてアーモンドアイの存在は2020年の私にとって大きな光だった。

2020年のサヨナラ

・8月22日、愛車の走行距離が16万キロを突破した。8月29日、愛車にのってちょうど10年が経過した。春頃からエグゾーストの警告ランプが断続的に灯るようになり、不安を感じつつももう少し大事に乗りたいと誓っていた。だが、別れは突然やってきた。10年の節目を待っていたかのように、9月に入ってエンジン始動が不安定になった。9月7日、さらに状態は悪化し、何度もエンストしながらかろうじてディーラーにたどり着いた。こんな経験は初めてだった。復活を祈りながら診断を待った。・・・経年劣化でタイミングベルトが伸びて、他にも劣化部分を交換修理するとウン十万かかるとのことだった。担当者には修理して乗ることの無謀さについて諭された。名残惜しかったが、9月11日、愛車にサヨナラを伝えた。ヨーロッパ生まれの四輪駆動セダンで、サイドビューが美しい素敵な車だった。

 免許を取り立てのころに良く走っていた人気のクーペやスポーツカーは最近見かけなくなった。時代はSUV全盛なのだが、重心の低い車が好きだ。バブルの時代に人気だったスポーツカーに憧れていたからなのか、高校生のころ愛読していたシャコタン☆ブギの影響なのだろうか。訳あっていまだに代車の軽自動車にのっているのだが、時代遅れといわれても次も重心が低く走りの気持ちイイ車がいい。

・10月のある日、漫画家・まつもと泉先生の訃報が目に飛び込んだ。中学生の頃、週刊少年ジャンプで毎週ドキドキしながら『きまぐれオレンジ★ロード』を楽しみに読んでいたことが脳裡に甦った。思い立って検索してみると、Kindle unlimitedで全巻配信されていた。早速2巻まで読んだ。・・・あの頃とドキドキは変わらなかった。全10巻配信されている。まだまだドキドキが楽しめそうだ。ヒマを見つけてゆっくり読もう。まつもと先生のご冥福を祈る。

おわりに

毎年、この季節になると決まって考えることがある。一つは、県内一当たりがでる(?)というフーズボックスいわしたで年末ジャンボ宝くじを買うこと、もう一つは、有馬記念を的中させて一年を締めくくりたいと願うことだ。最近になって、アドベントカレンダーに何かを書かないと、と考えるようになった。筆無精の私が3年も続けられているのは不思議なのだが、一緒に走っているランナーがそれぞれのスタイルで楽しそうだし、自由に書いても寛く受け入れてくれる場があることが理由なのだろう。毎年この素敵な場を立ててくれている主催者の@taizoooさん、たすきを繋ぎながら一緒に走ってるランナー、それを眺めて応援したり冷めた目で一瞥くれたりしている傍観者、次は自分も走ってみようという挑戦者、この記事に触れてくれた全ての皆様に感謝します。来年も皆様にとって素敵な一年になりますように。

  • この記事は、2020 Advent Calendar 2020の第25日目の記事として書かれました。

  • 前日はbasteiさん、次はたぶん来年のAdvent Calender 2021(開催未定)です。