2021年のベスト

音楽のこと。

自身の音楽体験がレコードやCDをカセットテープにダビングしてウォークマンで聴くところから始まっているから、これまで配信の音楽の便利さを実感しつつも、メディアで聴く音楽への愛情とこだわりがあった。2021年は、音楽を聴くスタイルがサブスクリプションへと大きくシフトした一年だった。

年明け早々に車を乗り換えた。新しい愛車には、CDを入れるスロットが搭載されていなかった。購入したCDを車で聴くことが習慣だった私にはかなりの衝撃だった。先代の愛車を購入したのはCDで音楽を聴くのがまだ常識的だった時代で、6枚がけCDチェンジャーとダッシュボードにCD/DVDスロットが搭載され、ライブ映像のDVDも視聴することができたため、このシステム変更には大きな喪失感を感じた。

新しい相棒はスマートフォンiPodを繋げば、車のメディア再生システム(Android autoやappleCarplay)と連動して、spotifyapple musicが聴けるようになった。サブスクリプションへの課金は、apple musicが最初でサービス開始直後から加入していたが、Spotifyもサービスが開始されてから加入しており、しばらくダブル課金の状態だった。この機会にどちらかに絞ろうと考え、アンドロイドスマホのGalaxy S9と手持ちのiPod touchを繋いでみてインターフェイスや使い勝手を試した。

iPod touchには、2005年にiTunes Storeが開いてから購入した曲がすべて入っており最後まで捨てがたかったのだが、最終的にSpotify一本に絞ることにした。それはAndroid auto / SpotifyのUIのほうが好みであったし、何より一年間に聴いた音楽が年末に集計されるSpotifyまとめを楽しみにしていて、これまでapple musicにも分散していた再生を統一して真の年間Top Songsを知りたいと思ったからだった。

そして、年末に発表された2021年心のベストテン第1位はこんな曲だった:

My Top artist  1位 ジョン・ハイアット

My Top songs  1位  サーカスナイト/ 君島大空と塩塚モエカ

 ジョン・ハイアットは今年枯れた魅力全開の新譜を出し、メディアでは発売されていない88年のライブ音源(最も脂ののった時期だろう)も配信されて、これが素晴らしくて何度も聴いた。そういえば、12年前、Twitterがなんたるかを理解していなかったころに、鼻歌を歌いながらハイアットさんの曲をアカウント名につけたことを思い出した。昔も、今もハイアットさんのスタイルが好きだ。

 君島大空は今年再結成したAJICOがパーソナリティのFM番組で紹介されていてはじめて知った。個性的で不思議な魅力のヴォーカルと演奏だが、まさか心のベストテン第1位とは思わなかった。

Apple musicへの課金をやめた代わりに、radikoプレミアムに登録した。スマホを繋げるとradikoも車で聴けるようになったからだ。radikoプレミアムは全国のラジオがオンデマンドで聴ける。ラジオには単に音楽を再生しているのとは違う楽しさがあって、高校生のころラジオ付きウォークマンで深夜放送を聴いたり、プロ野球中継を聴いていたことが脳裏に甦った。京都の放送局α-stationUAAJICOの出演している番組や、土岐麻子の番組を良く聴いた。新しいシステムになって、車内で音楽やラジオが時間と空間を超越して自由に聴けるようになった。カセットテープで編集したりFM放送のエアチェックを聴いていた時代を思うとなんて快適になったのだろう。これまで好きな音楽を聴くための常識だったCDを購入する機会が激減した。

2021年のミュージックシーンでの個人的なハイライトは20年ぶりのAJICOの復活(UAの活動再開)だった。2000年に発表されたライブ盤AJICO SHOWは名盤で、未だに時々聴きたくなる。

https://scrapbox.io/cd/AJICO_SHOW_%7C_AJICO

新譜は、たった4曲しか入っていないのだが、個々のメンバーの円熟した演奏とクオリティーの高さに感動した。とにかく、AJICOUAの出演するものはできる限りチェックした。αステーションのACJIO再結成の特番、NHKのThe Covers、フジロックCure JazzのLive streaming、WOWOWでのライブ、αステーションUAの番組。どれもワクワクしながら楽しい時間を過ごした。元来ものぐさなので、気が向いたときしか気に入った音楽の編集はしないのだが、今年AJICO再結成を記念して唯一真面目にプレイリストを作成したので、2021年のベストとして残しておきたい。

https://open.spotify.com/embed/playlist/5Y6kbiWFttW8oqKur6QSXI

最近、2017年の私がこう問いかけてくる。『お前はいつからサブスク側の人間になったのだ?』

2021年の私はこう答える。『気がついたら、こっち側にいたんだ。確かに、ドキドキは減ったよ。でもそれよりも便利で快適なんだ。時代は変わったんだ。もうそっちには戻れないかもしれないけど、たまにドキドキを感じたくなったらそっちにいくよ。』

日記について。

 2015年に購入したSonyのSIMフリー端末にLifelogというアプリがバンドルされていた。メインの機能として専用のリストバンドをつけると、歩数とか睡眠のlogが記録されるのだが、他にLife Bookmarksというテキストを記録出来る機能があって日記(備忘録?)として使用していた。

元々筆無精の三日坊主なので日記と言っても毎日書くわけでなく、気が向いたときに一言記録するぐらいのものだ。ただ、5年以上も使っているとそれなりの記録が残っていて、後で見返すと、まあたいしたことは書いていないのだがその時の情景が浮かんできて味わい深いものがある。

・2015年10月31日  陽水。

・2016年4月24日    城福さんを迎え撃つ

・2017年10月29日    雨の中、ヴィッセルに逆転負け。

・2018年4月7日        サトミキにハイタッチしてもらう。

・2019年10月19日     RWC初観戦。

・2020年8月4日         燕岳登頂した。

生まれてこの方日記なんて続けたことねーや、と思っていたがこうしてみるとちゃんと続けていて、少しだけ自分を褒めてやりたくなった。悲しいことに、2020年の半ばにサービスの打ち切りが発表された。クラウドと同期されず、アプリは継続使用出来るのだが機種交換してしまえばそれまでだった。せっかく6年間記録してきたんだから勝手にやめんじゃネーよ、と思ったが、タダで使っていたし規約もないのだから仕方がない。代替えとなる日記アプリを色々と探した。そして2021年年始から、『10年日記』というアプリを使うことにした。今年一年、気が向いたときに10年日記をつけているのだが、なかなかイイ。

10年日記のいいところは、

・アプリ版とWeb版があって両方で記録、閲覧ができる。

・写真の記録も残る(Lifelogは文字だけだった)。

・名前の通り、10年分の同じ日の記録が一覧でみれるようになっている。

タグ機能があって、後でイベントの検索が便利。

今年は10年日記の1年目。ぼちぼちと気が向いたときに記録して、何年かたって振り返るのが楽しみだ。10年日記には有料サービスがあって、月に120円払うと30年分記録できるらしい。そんなに続けられる自信はないから登録しないけど、10年続けられたら会員になってもイイかな、と思う。そして、10年日記と謳うからにはずっとサービスが続いてくれることを信じている。

街のサッカーチームのこと。

昨年はコロナウイルスの影響をもろに受けて、初めて小瀬で観戦できたのが8月だった。今年も相変わらず感染は蔓延していたが、昨年の経験を基に色々な対策が講じられ、開幕からスケジュール通り観戦できたのは有り難かった。

 例年通り、バックスタンド自由席のシーズンシートだったが、感染対策の一環で自由席なのに指定席だった。一年間通っていると、隣にはいつも同じサポーターが座っている。通っている目的は同じだから、いつしか挨拶やちょっとした会話を交わすようになった。そして、走って小瀬にやって来て、スタンドでいそいそと観戦スタイルに着替えている一人のサポーターも認識することができた。

今年も、終盤までJ1昇格に向けてチームは奮闘していた。今シーズン良かったことは、ホームでの成績が良かったこと、大卒新人の活躍がめざましかったことだ。

 色々な激闘のシーンが脳裏に焼き付いているのだが、最も印象に残った試合は9月のホーム京都戦だ。この日は大雨の悪天候、ちょうど立て込んだ仕事で余裕がない時期で、小瀬への出陣はあきらめDAZN観戦だった。

相手は、ウタカや武田将平を要する京都、こちらは攻撃の核だった泉沢を怪我で失い、ここで負ければ今シーズンの昇格は絶望的となるだろう背水の陣の一戦だった。ここで泉沢に変わって起用された宮崎純真の鬼神の働きと成長ぶりに目を瞠った。純真は地元山梨学院から高卒入団し一年目からリーグ戦で得点するなど期待の若手だったが、この試合で一気に覚醒した。3-0。首位京都を鮮やかに撃破し、昇格戦線に食らいついた。

予算の限られたちっぽけな街のクラブを応援していて常々感じていることは、我々より予算規模の大きなクラブには負けたくないということ、近くの公園で上を目指して日々トレーニングに励んでいる若い奴らが躍動して勝つ試合をみると明るい気持ちになれるということだ。この試合は、そんなサポーターの願望を120%満たしてくれた、今年のハイライトだった。

2021年もあと一歩で昇格に届かなかった。地方の市民クラブの宿命は、限られた予算のなかでチームを編成しなければならないことだ。活躍した若手は、上のカテゴリーや資金のあるクラブに引っ張られていく。強いチームを維持していくのは大変だ。無い袖は振れないので他で知恵を絞って勝負するしかないのだが、毎年優秀な新人を連れてくるスカウトには感謝しているし、さらに見る目を研ぎ澄まして継続して欲しい。ポテンシャルの高い若手はずっと在籍して活躍して欲しいと願うが、それは了見の狭い話で、プロである以上、常に上を目指して世界に羽ばたいて欲しい。街の公園の練習場にはこう書いてある。

『韮崎から世界のピッチへ!!』

そして、世界で活躍した折には『僕の原点は甲府です。』とか言ってくれて、キャリアの終盤(中盤でもいいが)にひょっこり帰って来てくれたりすると最高だ。

(12/22宮崎純真、12/24長谷川元希の契約更新が発表された。来年の更なる飛躍を楽しみにしてる。)

2021年のサヨナラ

チャーリー・ワッツ

8月5日、ローリング・ストーンズは9月下旬から始まるツアーでドラマーのチャーリー・ワッツが参加しないことを発表した。病気で医療処置をうけ、治療は成功したものの、医師によって休養が必要と判断されたとのことだった。

ワッツ:『今回だけは、タイミングが悪かった。完全に回復しようと努力していますが、本日、もうしばらく時間がかかるという専門家のアドバイスを受け入れました。新型コロナでファンの皆さんが苦しんだ上に、またツアーの延期や中止でチケットを持つ多くのファンを失望させたくありません。そこで、私の素晴らしい友人であるスティーヴ・ジョーダンに代役をお願いしました。』

それから間もない8月24日、ワッツさんの訃報が届いた。ワッツさんは、代役を託した時に自分の余命を悟っていたのだろう。1963年から不動のドラマーとして50年以上ツアーを休んだことがなかった。そして死が迫った直前までツアーの開催や聴衆を大切に考えていたワッツさんの姿勢こそが、ストーンズがここまで長く第一線で活躍し続けた精神的支柱だったのではないかと感じた。ご冥福を祈ります。ストーンズの歴史に少しでも立ち会うことができて良かった。過去の回顧録を追悼として捧げたい。

https://realfinelove.goat.me/loTsd5jd0Q

TUTAYAの閉店

11月28日、近所のTUTAYAが閉店になった。15年前に開店した店だった。この街で暮らし始めてちょうど15年になるから、この店は生活の中に自然に溶け込んだ風景だった。思えばTUTAYAにはお世話になった。2003年〜2006年に栃木県で仕事をしていたころ、近所にあった店舗に良くいった。本も文房具も買えたし、CDやレンタルビデオも良く借りた。

今では月々980円で世界中の音楽が聴けて、自宅のPCで簡単に映画も視聴できる。TUTAYAから客足が遠のくのは当然だったし、コロナ禍もこの流れに拍車をかけた。寂しいが、今年、レンタルレコード文化の終焉を見た。時代の、サブスクの波には抗えなかった。

レンタルショップの閉店を目の当たりにして、高校生のころ通っていたレンタルレコード店:友&愛の光景や、新しい音楽を探求するドキドキした感情を懐かしく思いだした。

おわりに。

2017年にアドベントカレンダーに初めて参加した時、表現する場を持っていなかった私は勘でg.o.a.tという聞き慣れないブログサービスを選んだ。使ってみるとシンプルで直感的に使いやすくて、気に入っていた。このカレンダーでもたぶん同じものは使われてなくて、多様性という面で大きな貢献をしていたと勝手に思っている。

11月30日、g.o.a.tサービスの提供終了という悲しいお知らせが届いた。薄々そのリスクを感じてはいたが、いざ突然宣告されると途方にくれている。来年5月31日で終了するらしいので、5月の連休のころには引っ越し作業をしようかとボンヤリ考えている。(何か良いサービスがあるかな・・・)

あらためて規約を読んでみると、g.o.a.tとは『Greatest of All Time(史上最高)』の略であることを知った。5年間、史上最高の瞬間をここで表現していたのだなーと思うと、実はベスト・オブ・○○の企画に相応しいページだったのだ。寂しいが、このサービスに偶然出会えたことに感謝しつつ、新しい一歩を踏み出したい。今年も表現の場を開いてくれた主催者のtaizoooさんに感謝。そして、この記事に触れてくれた全ての皆様にとって、来年も良い年でありますように。

・この記事は、2021 Advent Calendar 2021の第25日目の記事として書かれました。

・前日はtomoyayazakiさん、次はたぶん来年のAdvent Calender 2022(開催未定)です。