2022年のベスト

音楽のこと。

CDオブザイヤー

音楽配信の時代、一昔前に比べると年間に購入するCDの数は激減したので、購入した中で一番再生したベストCDはどれか?を選ぶのはとても簡単になった。今年はこの5択になる。

  1. Live at the El Mocambo / The Rolling Stones
  2. Black Radio 3 / Robert Glasper
  3. Are you romantic? / UA
  4. Softly / 山下達郎
  5. 一青尽図 / 一青窈


Spotifyのように正確に再生回数が記録される訳ではないのでマニュアルの感覚だが、一番聴いていたのは間違いなく、UAの新譜になる。
ロックン・ロール、ジャズ・ボーカル、島唄など何を歌わせてもスペシャルな彼女は心のベスト・ヴォーカリストの一人。ということで、CDオブザイヤーはUAの新譜に決定。7月に記述したレビューのリンクを貼っておく。
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もう一つ審査員特別賞を選ぶなら、山下達郎のSoftlyになる。なぜなら、配信で聴けないのはこれだけだから。彼が配信を解禁しないのは色んな理由があるのだろうが、ネットで拾った記事によると発表する音源の音質にこだわっているのだとか。その職人気質は尊敬しているし、これからも貫いて欲しいと思う。レコードやCDを購入して音楽を聴く時代に育った私にとっては、新譜を買って聴くのは長年の習慣であり、この昔ながらの音楽へのアプローチを残してくれている達郎サンは貴重なアーチストだと感じている。


2022年の心のベストテン(Spotify まとめ)
年末、恒例のSpotify まとめが発表された。これはマニュアルの感覚と違って、正確に一番再生した曲とアーチストがわかる。
そして今年のベストテン第一位はこんな曲でした:

  • トップソング Jeff Beck & Johnny Depp: 『Ooo Baby Baby』
  • トップアーチスト Robert Glasper
心のベストテン

ジェフ・ベックを初めて知ったのは高校生の頃で、聴いていたFMラジオでブリティッシュ三大ギタリストの1人として紹介されていたことを憶えている。それから熱心に追いかけているわけではないが、そのライブ演奏は素晴らしく手元のDVDはベストライブ映像の一つだ。夏に発表された新譜に収録されたこの曲はSmokey Robinson &The Miraclesの1965年のカバーで、60年代のソウルミュージックにベックのギターソロが重なる心地よい佳曲。今回の新譜にはマーヴィン・ゲイのWhat's Going onもカバーされているし、1986年のFLASHに収録されたPeople Get Readyなどジェフ・ベックの取り上げるソウル・クラッシックは名演ばかりだ。

ロバート・グラスパーはジャズ・ヒップホップシーンで活躍するシンガーやミュージシャンとのコラボレーション”Black Radio”の続編を発表して、今回も熱心に聴いた。このシリーズ共通だがグラスパーのピアノ演奏は脇役に徹しているのに印象的なフレーズを聴かせるところがいい。だが個人的にはアコースティック・トリオのグラスパーが好きなので(2015年のCoveredが最高)、次回はアコースティックトリオの新作が聴きたいと願っている。

2015年、横浜で開催されたBlue Note Jazz Festivalを幸運にも現地で鑑賞することができた。奇しくもこのとき出演していたグラスパーとジェフ・ベックの新譜を愛聴した2022年だった。

読書のこと。

2月、ロシアのウクライナへの侵攻が始まった。なぜこの時代に戦争をはじめなければいけないのか、島国でくらす日本人には理解しがたい複雑な民族間抗争や国の主権争いが背景にあることを改めて知った。ふと、太平洋戦争終戦間際の北方領土を舞台にソ連の不条理な侵攻を描いた「終わらざる夏」という小説が積読山脈の地層の底に眠っていることが脳裏に甦って、今こそ読むべき時だと感じた。物語は史実をベースとして、戦争に巻き込まれて占守島に連れて行かれる英語翻訳者、青年医師、歴戦の軍曹や女子工員など様々な登場人物の心境を描くフィクションだが、スターリンの命令で大義なき戦闘にかり出され翻弄されるソ連兵(ウクライナの将校)の視点でも物語が紡がれているのが印象に残った。かつて我々の祖先もアジアへの侵攻をしていたわけだし、最近の中国の姿勢や北朝鮮の動向をみると人ごとではなく、この年になって、戦争の歴史や民族の多様性についてもっと知らなければという気持ちがある。高校生の頃、真面目に世界史を勉強しなかったから。年末になっても毎日流れる悲惨なニュースに少し気が滅入っている。一日でもはやく戦争が終結することを祈る。あまり読書がすすまない1年だったが、次はもう少し明るい話を読みたい。



街のサッカーチームのこと。

今年、指揮官を引き抜かれた街のサッカーチームは後任に再登板となる吉田達磨監督を迎えた。前回の就任時、一部サポーターからのリスペクトを欠く行為があったのにも関わらず、このクラブに感謝して退任していったことを記憶している。そして現職のシンガポール代表監督を辞任してまで、このちっぽけな街のサッカーチームの監督を引き受けてくれた。人間力がないとできないことだと思った。

この3年間、地道に順位をあげ、J1昇格まであと一歩に迫っているサッカーチームだったが、J2リーグは10年前優勝した時よりも全体のレベルが底上げされ勝ち抜くのは容易でなかった。コロナ感染での選手の離脱や、予期せぬ主力の退団もあり、後半失速した。しかし、このちっぽけな街のサッカーチームは日本全国のクラブが参加する歴史ある天皇杯で奇跡ともいえる快進撃を続け、遂に優勝するという歴史的快挙を成し遂げた。この快挙に立ち会った記憶をここに残したい。

第101回天皇杯体験記(J2ですが、何か?)

小瀬開催だったが平日のナイトゲーム。放送もなくネットで結果を拾うしかなかった。甲府の未来である内藤大和、飯嶋陸、中山陸の得点で快勝、明るい気持ちになった。

2回戦の活躍をみて、内藤大和と中山陸を見たいと強く感じて平日のナイトゲームだったが、仕事もそっちのけで小瀬に向かった。残念ながら大和はU-18代表によばれ、中山陸もベンチ外だった。小瀬に到着したのは試合開始から30分後だったが、到着したとたん三平和司の2ゴールで逆転。もしかして自分がラッキーを運んできたのか?と勘違いした夜だった。2ゴールとも素晴らしいゴールだった。そして、2点目の荒木のアシストも素晴らしく、リーグ戦での上昇には彼の活躍が必要不可欠だと感じた。

  • 7月13日 4回戦 サガン鳥栖 3-1 (ネットで経過をひろう)

ネットで経過をみていた。今年新加入したブルーノ・パライバの活躍と松本凪生のスーパーロングシュートで勝利。パライバは加入後先発した大宮戦で流れを変える活躍をしてくれ、大いに期待していたがシーズン途中で解約となってしまった。ブラジル人選手の日雇い労働者のような扱いが気になった。ナギは来年もその力を貸して欲しい。

リーグ戦では先制しても追いつかれて引き分け、攻めながら相手のワンチャンスで点を獲られ敗戦というモヤモヤが続いていた。絶好調三平のゴールで先制したが、前半すぐに追いつかれ、後半からルキアンが出てきたときは相当分が悪いと感じていたが、この日は違っていた。延長戦前半、松本ナギのボール奪取、関口正大選手の鮮やかなスルーパスから抜け出した鳥海芳樹選手がゴール前で倒されながら素早く流し込んで決勝ゴールを奪った。ゴールを決めた鳥海も、その前のナギのボール奪取、関口の鮮やかなパスもJ1勢を打倒しベスト8の壁を突き破るという若い奴らの野心が伝わる勝利だった。

準決勝の相手は主要タイトルを20も獲得しているJリーグの雄、鹿島。この日は小瀬とNHK甲府パブリックビューイングが開催予定で、たまたま出張の仕事だったので早く切り上げて小瀬に向かうつもりだった。夕方、冷たい雨が降っており、寒さのなかで観戦するのは気がすすまなかったので、予定を変更して駅北口のNHK甲府に向かった。

パブリックビューイングは初めてだったが、橋爪勇樹さんと、NHKのサッカー解説でよく見かける福西崇史さんがゲストで、試合前の見どころを解説してくれ、甲府勝利への期待感をさらに盛り上げてくれた。

前半37分、センターバックの浦上ニキ選手のロングフィードに、タイミングよく抜け出した宮崎純真は鮮やかなトラップでボールをコントロールし、飛び出したキーパーを冷静にかわしゴールに流し込んだ。これまでの甲府は格上相手に先制した後、持ち堪えた試合は記憶になかったが、この日は皆が集中して守り切り、見事に鹿島を完封した。

ちっぽけな街のサッカーチームを応援していて常々感じていることは、予算も環境も違うビッククラブには負けたくないし、このチームで育つ若手の活躍を見る喜びは何よりも大きいということだ。

この街のサッカーチームを応援する同志と興奮と歓喜を共有でき、くりくり坊主の高校生だった純真がこのチームで成長し、王者鹿島を撃破する活躍を見せてくれた感動で自然に涙がでた。福西&橋爪さんの解説と会場一体で体感することができた高揚感は鮮やかな記憶として残るだろうし、この感情を揺さぶられた試合は今年観戦した試合のベストだった。

余談ながら、福西さんは試合前、甲府が勝つならば1-0と予想していた。もともとカッコイイが、自分が女の子だったら惚れてしまっただろう。そして橋爪選手は同じ元プロサッカー選手としてワールドカップにも出場した福西さんはやはり特別な存在だったようで緊張しているのが伝わった。この素敵なパブリックビューイングを企画してくれたNHK甲府にも感謝したい。(安心して下さい。受信料、払ってます)

職場のTVで観戦した。天皇杯の決勝進出は夢にも思っていなかったので仕事の予定が入っていた。この歴史的な試合を現地で観戦することは叶わなかったが、TV観戦であっても記憶に残る激闘であり、奇跡のドラマだった。この試合については現地観戦の同志皆さんの鮮やかな記憶よりも良い文はどうしても書けないので、素敵な観戦記をここに引用させていただく。
copyanddestroy.hatenablog.com

matottorix.hatenablog.com

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最後のPK戦、両チームのベンチは対照的だった。甲府は、吉田監督が笑みを浮かべながら選手を指名し、それに一体となって応える選手たち。須貝や長谷川など若手主力の笑顔。ここまでくれば失うものはないし勝負は時の運、楽しもうぜ!という雰囲気が伝わり、今みても爽やかな気持ちになる。対する広島はキッカーを募り、笑顔をみせていた選手はいなかった。プロの世界は結果が全てであり、人間力のある監督が良い結果を残せる保証はない。仕切り直しで挑んだ今シーズンも厳しい現実が待っていた。だが最後の最後に勝利を手繰り寄せ、誰よりもチームの浮沈の歴史を知りそのフットボール人生を捧げてくれている山本英臣が決めて鮮やかに優勝する、という大団円に導いたのは、今年1年かけてこの雰囲気を作り出し、キッカーをセレクトした監督の力であり、人間力の賜物だったのではないかと感じている。

吉田達磨監督は、天皇杯優勝の2日後に解任が発表された。新聞記事を読むと、決勝の前にその通告はされていたようだ。この決勝戦をどんな心境で指揮していたのだろうか。きっと10年後には、リーグ戦の成績不振なんてちっぽけなことは全部洗い流されて、J2から天皇杯優勝に導いた伝説の監督として記憶に残るだろう。

年末、出張帰りの車内で聴いていたFMフジに、三平和司選手が出演しており天皇杯決勝のPK戦直前のベンチの様子を話してくれた。彼はすでにベンチに退いており蹴る権利がないのでちょー気楽に盛り上げ役に徹していたこと、同級生の河田選手にだけは頼んだよ、と直接声をかけていたことを語っていた。この天皇杯に限らず、シーズンを通してチームの結束のために三平選手の果たした役割は大きかった。天皇杯全試合を通してのMVPを選ぶなら、個人的には三平選手を選ぶだろう。

開催中、J1チームを撃破するたびに繰り返し胸の中で叫んでいたフレーズがある。そしてJ2の底のほうから頂点まで上り詰めたいま、そのフレーズが大きく増幅して頭の中で響いている。
『J2ですが、何か?』
元々はしばらく前に毎年発刊されていた企画本のタイトルだが当時J1にいた我々には関係がなかった。だが、2022年、この素敵なフレーズに惹きつけられ、この企画本の製作者のセンスに感心している。2022年の心の流行語大賞として、ここに記録を残したい。

2022年のサヨナラ

イビツァ・オシムさんが80歳で亡くなった。オシム監督については、代表監督時代熱心に日本代表を応援していたわけでもないし、オシムさん率いるジェフ千葉の試合に注目して見たことも無かった。だが我が愛すべきサッカーチームに在籍していた水野晃樹羽生直剛というオシムの教え子たちの言動に接していると、間接的にオシムが素晴らしい指導者であったことは伝わっている。また以前にTVでみたドキュメンタリーや木村元彦氏のルポルタージュで、かつて多民族国家だったユーゴスラビアの代表監督として多民族、異文化の違いを許容しつつチームをまとめイタリアワールドカップでベスト8に導いたことや、日本代表監督だった2007年に脳梗塞で倒れて帰国後も民族対立の絶えない祖国ボスニアを団結させ、2014年のワールドカップ初出場に導いたことなど、人としてのスケールのでかさを知り畏敬の念を抱いていた。5月8日、オシム没後、リーグ戦で低迷していたジェフ千葉アディショナルタイムに得点して劇的に勝利した。試合の詳細までは知らないが、きっと、クラブ関係者のオシムさんへの追悼と感謝の念がこの勝利を呼び寄せたのではないか、と感じた。ご冥福を祈る。いつか、時間に余裕ができたら「オシムの言葉」を読みなおしたい思っている。

ブログの引っ越しをした。2017年に選んだg.o.a.tというサービスは使いやすくて気に入っていたが、5月末で終了してしまうため、移行作業を余儀なくされた。引っ越しは面倒なので、簡単にサービスが終わらなさそうなのはどれか?という基準で考えたとき、はてなブログに納まった。アドベントカレンダーの多様性が薄れてしまうのはちょっと残念だが仕方が無い。筆無精の自分がどこまで続けられるかはわからないが、マイペースでやっていきたい。

  • 6月25日 Suunto traverse alfa

2016年に登山用に購入した腕時計SUUNTO traverse alfaを紛失した。この日、運動後に汗をかいて腕から外していたが、車から下車のタイミングで落としてしまったらしい。気がついたのは当日の夜だったが警察に届け出をして、落とした駐車場の会社にも問い合わせてみたがが、2週間音沙汰がなく、泣く泣く別れを告げた。それから1ヶ月の喪失感が半端でなかった。結局夏休みに、ヤフーオークションで同じ時計(色がブラックからカーキに変わったが)を中古で買い戻した。後にも先にも、ネットのオークションで物を買ったのは初めてだった。この時計、登山用の時計として高度はもちろん、GPSでルートの記録ができる。日常の時計としても見やすくて、ちまたで人気のスマートウオッチのように余分な情報が入ってこないのもいい。気圧計付きで急激な変化があるとストームアラームが鳴るのだがこれが全く当てにならないというお茶目な所も愛おしい。失って初めて大事な存在であることがわかった。これからは汗をかいても外では肌身離さず、故障するまで使い続けようと心に誓った2022年だった。

  • 7月  Galaxy S9

3年使ったGalaxy S9をアップデートして S21になった。まだ十分使えたのに、電池持ちが悪くなったな、と感じていたことと型落ちとなるS21の割引をしていたのでセールに飛びつくオバチャンの心境で機種交換してしまった。新しいS21は少し大きいと感じている。S9はエッジスクリーンになっていて大きさ、持ちやすさという意味では神機種だった。モノにはちょうどいい大きさというものがある。次にはこのS9のサイズを基準に選びたいと思った。モデルチェンジした新しいものが必ずしもイイとは限らないことを改めて実感した2022年夏だった。

  • 9月30日 サトミキ

Jリーグマネージャーのサトミキが引退してしまった。小瀬でハイタッチしてもらってから密かにファンだったので悲しかったが、twitterのアカウントやブログもこの日を境に閉鎖するとなっていたから、普通の女の子に戻るって事だなーと思った。芸能生活、色々あったのだろう。サヨナラ、サトミキ。いつか、普通の女の子として小瀬にきてくれるといいな。

おわりに

全世界を熱狂させた2022ワールドカップは、天才メッシの華々しい活躍もあってアルゼンチンの優勝で幕を閉じました。インターネットの世界を熱狂させたもう一つのワールドカップ、Advent Calender 2022も本日が最終日です。この素敵な大会のプロデューサー兼マネージャーの@taizoooさんには敬意を表したいと思いますし、この拙い記事に最後までお付き合いいただいた皆様にも感謝です。来年も皆さんにとって良い年でありますように。

・この記事は、2022 Advent Calendar 2022の第25日目の記事として書かれました。

・前日はwazuraiさん、次はたぶん来年のAdvent Calender 2023(開催未定)です。