2020年のベスト

2020年は、大きな変化の年だった。3月からCOVID-19;コロナウイルスが蔓延し、日常や社会生活の制限を余儀なくされた。趣味にしているサッカー観戦やライブ鑑賞もストップした。4月には今まで経験したこともない緊急事態宣言が発令され、自粛生活に突入した。そんな閉塞的な状況の中でも新しい発見や光が見えたこともあった。そんな2020年を自分なりに振り返りたい。

白いKindleと黒のKindle鬼平犯科帳

 J2リーグは2月に開幕戦を1戦行い、その直後に人が集まることが危惧される状況となり、楽しみにしていた街のサッカーチームのホーム開幕戦が延期になった。台風の日にも雨に打たれながらバカみたいに観戦にいったというのに、あんな見えないちっこいヤツごときのためにスタジアムに入れないというのが腹立たしかった。サッカーのない時間は苦痛だった。その時間に何をするか?とりあえず家でできることをやるしかない。そこで、数年前に衝動的に購入したがあまり活用していなかった白いKindle paperwhiteを手にし、静かに眠っていた鬼平犯科帳を読むことにした。

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 池波正太郎の代表作、鬼平犯科帳。高校生の頃に池波作品は数冊読んでおり、新選組永倉新八を主人公にした『幕末新選組』の爽やかな読後感をよく覚えていたが、じっくり読んだのはそれ以来だった。・・・一巻を読んだだけでその魅力に虜になった。時代を超えて愛されている理由がわかった。それは、①主人公の長谷川平蔵が人情味あふれカッコイイ、②鬼平を助ける脇役の個性が光る。③盗賊たちの癖がスゴイ。ということだ。物語に登場する良いヤツも悪いヤツもみんな自分のスタイルを貫いて生き生きとしているのだ。

  • 平蔵『相手が将軍家であろうとも、もと盗賊であろうともおれにとっては変わらぬことよ』

  • 彦十『入江町の銕さんのおためなら、こんなひからびたいのちなんぞ、いつ捨てても惜しかねえ』

  • うさぎ饅頭にそっくりなうさ忠こと木村忠吾『だって、おれはもう、お前とこうしているために、亡くなったおやじの残し金もつかい果たし、親類中から引き出せるだけのものは借りつくしてしまったのだぜ』

  • おまさ『おまさは、また密偵(いぬ)になりとうございます』

  • 蛇の平十郎『なあに、盗賊改メがこわくてお盗がなるものか』

  • 蓑火の喜之助『外道の最期とは手前たちのことよ』

 これまでサッカー観戦をしていた時間を鬼平犯科帳の読書に費やした2020年の前半だった。6月27日にサッカーが再開されるまで、5巻まで読み進めることができた。サッカーが始まってからはペースがおちたが全24巻、まだまだ先は長いのでゆっくり楽しもうと思う。

 ところで、家にはいつかの忘年会のビンゴで引き当てた黒いKindleも眠っていた。いつか家族にあげようと思っていたが、本を読む気配がないので出張の時に携帯するよう自分で使うことにした。ネット環境があれば、白いので読んだ途中から黒いのでも再開できる。とても便利だ。黒い方は少しばかり世代が新しく、若干コンパクトになっている。だが白い方のほうがつるつるとした手触りが良く、持ちやすくて自分には合っている。車でもなんでも、世代が新しいからといって必ずしも良くなったりフィットするとは限らないのだなと思った。読書については、最近まであんなに文庫本Loveを語っていたのに、コロナの影響でKindle Loveに大きく傾いたと感じた2020年暮れであった。

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鬼平江戸処

https://www.driveplaza.com/special/onihei/index.html

 東北自動車道の上り線の羽生パーキングエリアに、鬼平犯科帳の世界を再現した街がある。

以前からその存在は知っていたが、行きたくとも行く機会がなかった。今春、3回ほど、ここに通うことが出来たのはコロナの影響があったからだ。平常時は月に二回、電車で東京を経由して栃木県まで出張しているのだが、4月にでた緊急事態宣言を受け、人の多い東京駅をさけ車で出張先まで往復することを選択した。そして仕事帰りの東北道上りで、鬼平江戸処に寄ることができた。この街には鬼平犯科帳に登場する料亭がある。軍鶏鍋屋の『五鉄』やうなぎ屋の『忠八』、他にも色々な店や展示がある。もう鬼平の世界に浸れるだけで高揚してしまうのだが、本物の鰻や鯉平が調理している忠八の味は絶品だった。コロナがなければ、この街を訪れることができたのはいつだったのだろうか。ちょっとした幸運だった。

アニメ鬼平

https://onihei-anime.com

 『鬼平(おにへい)』のタイトルで2017年1月より4月までテレビ東京で放送された、鬼平犯科帳のアニメ版だ。サッカーのない春、Amazon Prime Videoで全13話が観れることを発見した。原作の中からセレクトされた13話だ。アニメの出来はBGMやビジュアルも全て含めてかなり良い。TVシリーズや劇場版など観たことがなく鬼平のイメージの先入観がなかったのが良かったのかもしれない。年末の執筆時点で11話までみた。一気に観ないのは楽しみをとっておくためだ。平蔵と古い友人の左馬助との友情と恋を描く『本所・桜屋敷』、鬼平を慕う女密偵のおまさを助けに行く『血闘』が秀逸だ。シーズン2の制作を願ってやまない。

 鬼平は人気作品なので、まだまだコンテンツがある。

・コミック 作画さいとう・たかを(最新刊はなんと111巻!、連載継続中)

・TV シリーズ

時間がないのとハマるのが怖くてまだ手を出していない。仕事が暇になったらいつか挑戦してみたい。

コロナのせいで、なぜか鬼平の世界に脚を踏み入れ、Kindleの良さを認識した1年だった。

ライブ鑑賞について

 ライブハウスやミュージシャンたちは今年のコロナ騒動で最も割をくらった被害者だろう。そして、タイミングが合えばライブ会場に足を運ぶのを趣味にしている私にとっても最悪の年だった。なにしろ、一度もライブを見に行けてないのだから。今年は、4月4日に斉藤和義のライブを見に行く予定だったが、コロナ騒動が直撃して延期になった。しばらくして振替公演が9月19日と発表された。楽しみに待っていたが、ライブハウスでクラスターが発生、などという暗いニュースが流れ、容易に開催出来ない状況は変わらなかった。再振替公演は2021年の9月18日と発表された。この頃にはコロナが撲滅され、音楽を楽しめる環境に復興することを心から願っている。

 コロナの影響で大きく変わったのは、会場のライブを自宅のPCで鑑賞できるLive Streamingが広まったことだ。リーズナブルな値段で、普段は行けないような場所や時間のライブも自宅で鑑賞できる。素敵なサービスだ。ライブハウスやミュージシャンたちが生き残るためにも、これは必然の方法だと感じている。今年良かったLive Streamingについては、別のページで書き残したい。2020年の暮れの今、年明けに配信される矢野顕子と、菊池成孔×UAの配信を楽しみにしている。

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サッカーの話

 異例のシーズンだった。2月に開幕戦を戦って以降、リーグ戦は中断した。緊急事態宣言が発令され、プロスポーツは止まってしまった。6月下旬にようやく無観客でリーグは再開されたが、発表されたスケジュールは厳しいものだった。42試合を消化するために真夏にも中2日、3日の5連戦が組まれているのだ。街のサッカーチームは選手を入れ替えながら戦うことを選択した。この選択は正しかったと思う。若い奴らが躍動して勝つ試合をみて、未来は明るいと何度も感じることが出来た。首位の長崎や北九州を連破し、昇格を確信し高揚していた9月だった。だが決定力不足は簡単には解決出来なかった。引き分けが多いのが響いて昇格には届かなかったが、限られた予算のなかで選手を編成し、懸命に戦い、賞賛されるべき順位だと思っている。今願うことは、今年成長した選手たちが同じ監督のもとで一つの方向に向かって来シーズンを戦って欲しいということだ。(祝!監督続投決定。)

 今シーズン、忘れてはならないのは甲府の心臓・オミの存在感が凄かったことだ。オミのJリーグ500試合出場は、なんとしてでも小瀬に見に行こうと誓っていたが、9月9日の首位の長崎との試合は平日のナイトゲームでどうしても外せない会議があった。試合当日、会議終了後に駆けつければ20時50分、10分でも現地で歴史を目撃しようと考え小瀬に向かった。駐車場からダッシュすると、試合中のはずがなぜか静かなピッチが目に飛び込んだ。入り口の係員に確認してようやく状況を理解した。その日、夜7時前後に雷雨があり、試合開始が1時間ほど遅れ、駆けつけたタイミングはちょうどハーフタイムだったのだ。記念すべきオミの500試合で、首位長崎を撃破した試合の後半を現地で観戦し、オミのインタビューを聞けたことは小さな奇跡だった。

未来少年コナン

未来少年コナン。1978年に放送された、宮崎駿の監督したアニメだ。今春、コロナの影響で制作スケジュールに影響が発生し『キングダム』の放送が延期となったため、再開までの代替え番組として未来少年コナンのHDリマスター版が放送された。

 当時まだ物心のつかない子供だった私は最初の放送を見たことは覚えているが、記憶をたどって思い出すのはロボノイドに乗ったダイス船長に追いかけられているシーンであり、ストーリーについてはほとんど記憶がなかった。まだ幼かった私には、手に汗握るSFやコナンとラナのラブストーリーよりも、同じ頃放送していたトムとジェリーのほうが遙かに面白かったのだろう。

 日曜日の深夜という時間の放送だったが、ちょうどNHKの放送がオンデマンドで見れるサービスに登録したため、一週間遅れで毎週日曜日にデスクのPCで鑑賞を始めた。昔懐かしさで軽い気持ちで見始めたのだが、見ていくうちにそのストーリーに引き込まれ、大河ドラマを見るよりも毎週の楽しみになった。

物語の舞台が、2008年に超磁力兵器が用いられた最終戦争で世界が壊滅的な被害を受けた20年後の2028年に設定されており、パンデミックが世界を襲った2020年にこの作品を見ることに不思議な感覚を覚えた。

 この作品の魅力を一つあげるなら、ダイス船長やモンスリーをはじめとする登場人物のキャラが際立っているだけでなく、ロボノイドやバラクーダ号や飛行艇ファルコといった乗り物にも個性がある所だろう。幼少期には理解が追いつかなかったストーリーや登場する魅力的なキャラや乗り物たちがこの年になってなぜか心に響いた。第18回の沈没するガンボートにとらわれていたラナを救出するシーンでは二人の絆の描き方に泣きそうになったし、最終回で用意されているサプライズも微笑ましかった。

 全26話が約半年放送され、11月に最終回を迎えたが、放送が終わった翌週のさみしさは近年感じたことのないものだった。コロナの蔓延は迷惑千万なのだが、そのおかげでこの傑作SFアニメを再発見できたことは幸運だったと感じている。

アーモンドアイ

彼女もコロナの影響を受けた一頭だった。今春、3月末のドバイ・ターフ(G1)連覇に向けて早々に現地入りしていたが、コロナの影響で6日前に中止となって無駄足となった。帰国して選んだのは5月の東京競馬場で開催されるG1ヴィクトリアマイルだった。国内の牝馬同士なら敵なしで、ここを楽勝し、次の安田記念ではグランアレグリアの鬼脚に後塵を拝したものの、秋の天皇賞ジャパンカップを連勝し、シンボリルドルフ他を抜いて史上初のG1 9勝、獲得賞金歴代No1の名実ともに歴史に残る名牝となった。そして、鮮やかにターフを去って行った。結果的には春のドバイ出走中断は幸運だった。国内で走るアーモンドアイに勇気づけられたファンはたくさんいただろうし、コロナがなければドバイや香港の国際レースに挑戦していただろうが、この大記録は生まれなかっただろう。この閉塞的な世界の中で、無観客ながら絶え間なく競馬が開催されていたこと、そしてアーモンドアイの存在は2020年の私にとって大きな光だった。

2020年のサヨナラ

・8月22日、愛車の走行距離が16万キロを突破した。8月29日、愛車にのってちょうど10年が経過した。春頃からエグゾーストの警告ランプが断続的に灯るようになり、不安を感じつつももう少し大事に乗りたいと誓っていた。だが、別れは突然やってきた。10年の節目を待っていたかのように、9月に入ってエンジン始動が不安定になった。9月7日、さらに状態は悪化し、何度もエンストしながらかろうじてディーラーにたどり着いた。こんな経験は初めてだった。復活を祈りながら診断を待った。・・・経年劣化でタイミングベルトが伸びて、他にも劣化部分を交換修理するとウン十万かかるとのことだった。担当者には修理して乗ることの無謀さについて諭された。名残惜しかったが、9月11日、愛車にサヨナラを伝えた。ヨーロッパ生まれの四輪駆動セダンで、サイドビューが美しい素敵な車だった。

 免許を取り立てのころに良く走っていた人気のクーペやスポーツカーは最近見かけなくなった。時代はSUV全盛なのだが、重心の低い車が好きだ。バブルの時代に人気だったスポーツカーに憧れていたからなのか、高校生のころ愛読していたシャコタン☆ブギの影響なのだろうか。訳あっていまだに代車の軽自動車にのっているのだが、時代遅れといわれても次も重心が低く走りの気持ちイイ車がいい。

・10月のある日、漫画家・まつもと泉先生の訃報が目に飛び込んだ。中学生の頃、週刊少年ジャンプで毎週ドキドキしながら『きまぐれオレンジ★ロード』を楽しみに読んでいたことが脳裡に甦った。思い立って検索してみると、Kindle unlimitedで全巻配信されていた。早速2巻まで読んだ。・・・あの頃とドキドキは変わらなかった。全10巻配信されている。まだまだドキドキが楽しめそうだ。ヒマを見つけてゆっくり読もう。まつもと先生のご冥福を祈る。

おわりに

毎年、この季節になると決まって考えることがある。一つは、県内一当たりがでる(?)というフーズボックスいわしたで年末ジャンボ宝くじを買うこと、もう一つは、有馬記念を的中させて一年を締めくくりたいと願うことだ。最近になって、アドベントカレンダーに何かを書かないと、と考えるようになった。筆無精の私が3年も続けられているのは不思議なのだが、一緒に走っているランナーがそれぞれのスタイルで楽しそうだし、自由に書いても寛く受け入れてくれる場があることが理由なのだろう。毎年この素敵な場を立ててくれている主催者の@taizoooさん、たすきを繋ぎながら一緒に走ってるランナー、それを眺めて応援したり冷めた目で一瞥くれたりしている傍観者、次は自分も走ってみようという挑戦者、この記事に触れてくれた全ての皆様に感謝します。来年も皆様にとって素敵な一年になりますように。

  • この記事は、2020 Advent Calendar 2020の第25日目の記事として書かれました。

  • 前日はbasteiさん、次はたぶん来年のAdvent Calender 2021(開催未定)です。

2019年のライブ鑑賞

2019年。時代は平成から令和に。時代は変わってもあいも変わらずスキを見つけてライブに通っている。

今年見に行ったライブを振り返る。

1月 Marcus Miller & Butter Scotch

  マーカス師匠は年末年始、日本に出稼ぎに来ていた。ガッツリ稼ぎに東京だけで一週間も出番を入れて。今回はビートボクサーのバター・スコッチ姉さん(といっても若そう)を引き連れてやってくるというので、ちょうど正月休みだったので観に行きました。

ビートボクサーって概念、はじめて知りましたが人間の発話器官を使ってリズム、音楽を作り出す音楽表現をする人のことだそうです。師匠は安定の演奏で、ゴリゴリのベースプレイが楽しめたし、バタースコッチの独特のリズムがとても新鮮なライブでした。バタースコッチさんを紹介してくれた師匠に感謝!

1月 Robert Glasper Trio

 今年もタイミングよくグラスパー・トリオが観れた。

このトリオの、「Stella by Starlight」は絶品。またデミアン・リードのドラミングも最高。

何度でも観たいと思った。

4月 Michel Camillo Trio Latino

with Rickey Rodriguez & Eliel Lazo

         カミロおじさんとラテン・トリオ

カミロおじさんと最初に出会ったのはニューヨークのブルーノート、2011年の秋だった。カミロおじさんを見たかったわけでなく、仕事で宿泊した日がたまたまカミロおじさんの出番だったのでした。

Mano a manoのアルバムから、素晴らしいパーカッション奏者を従えてのライブで今でも印象に残っています。それ以来、おじさんのファン。8年ぶりに、再会したが、今回はパーカッションに鬼才Eliel Lazoを引き連れてのラテントリオとしてのライブ。カミロおじさんの技が最大に発揮された興奮のライブでした。

8月  矢野顕子トリオ、今回はタイミングが合わず観に行けなかった。来年はタイミングが合えば行くよ。

11月 Candy Dulfer

父親ハンス・ダルファー(御年79)と共に来日する予定だったが、ハンスじいさんの病気により

ソロで来日。90年代前半、SAX A Go Goを初めて聴いて素敵なオネーサンがファンキーなSAXを吹いているというだけで、20代の僕には刺激的だったことを覚えている。そして、ヴァン・モリソンにも引っ張られて1994年のNight in sanfranciscoのライブ盤での活躍も素晴らしかった。まさか2019年になってライブを見に行けるとは思ってもなくラッキーだった。50歳の誕生日ライブとのことで、ノリノリの演奏を聴かせてくれました。なぜか、カルロス・サンタナのEuropaを演奏してcandy dulferのサックスの他にギタリストの見せ場があってこれが良かった。来年はハンスじいさんを連れてくると言ってましたが、もう80だから無理しないでね、って思いました。

2019年の鮮やかな記憶。来年もタイミングが合って、素敵なライブが見れますように。

2019年のベスト

2019年。令和元年。色々と忙しく余裕がない年だったが、それでも良かったことはあった。つらかったこと、大変だったことは85%ぐらいは忘れてしまった。良かったことは90%ぐらいは覚えている。

そんな2019年の記憶をここに残したい。

ストーンズ回顧録

 3月、五反田でEXHIBITIONISM ザ・ローリング・ストーンズ展が開かれた。メンバー自らがプロデュースする企画展で、2016年からロンドンを皮切りに、ニューヨーク・シカゴ・ラスベガス・ナッシュビルシドニーと世界各地で開催されてきた。東京はアジア唯一の開催となるらしい。幸運にもこの展示を見ることができた。そしてストーンズの魅力について改めて考える機会となった。50年以上現役続行しているストーンズだが、ふと気がつくと30年ぐらいはリアルタイムに接していた。思い返せばドキドキすることが多かった。2019年のベストとして回顧録を残したいと思った。

  • 1987年。高校生のある日、友人から『Hot Rocks』という編集ベストのテープを借りて、通学中にWalkmanで聴いていたのがストーンズとの最初の出会いだった。当時はその魅力など良くわからずにとりあえず聴いていた。

  • 1988年。この頃、CreamとかPaul Butterfield Blues Bandとか、ブルース・ロックと言われるジャンルの音楽に魅力を感じるようになった。まだストーンズとブルースの深い関係など知らなかった。

  • 1990年の2月、ストーンズが初来日するという歴史的出来事に直面した。ロックン・ロールな友人はまもなく始まる大学入試などどこ吹く風で、東京ドームに向かった。なぜストーンズに熱狂しているのかよくわからなかったけど、ロックな友人がまぶしく見えた。

  • 1991年、山梨県で暮らすようになりBOOK  BAHNって名前のCDも売っている街の本屋によく通った。そのころ、Virginレコードから70年代〜80年代の紙ジャケットを再現した輸入盤復刻CDが販売されており、8つのタイトルを買いそろえ繰り返しきいた。各タイトルは、アルバムごとに違う色があり、高校生のころ聴いたベスト盤にはない素敵な曲が多いことに気がつき、ストーンズが好きになった。特に気に入ったのはカントリー色の強い『Exile On Main St』、テンプテーションズのカバーも収められた『Some Girls』、カッコいいR&Rと素敵なバラッドの名盤『Tatto You』。

  • 1993年、ミック・ジャガーのソロ『Wandering Spirit』を聴いた。レニー・クラビッツと共演したUse Meがいい。

  • 1994年頃、FM富士の何かの番組に生出演することがあった。詳細は良く覚えていない。そのときにリクエストした曲がSome Girlsに入っているバラッド『Beast of Burden』。後にも先にもラジオにリクエストして曲がかかったのはこのときだけだ。

  • 1994年、'ラスト・ソウルマン’ Bobby Womackの復活作『Resurrection』にストーンズやロッド・スチュアートが参加。アルバム自体も傑作だが特にストーンズ参加曲が良い。

  • 1995年、アイルランドの民謡バンド、ザ・チーフタンズの『The Long Black Veil』を聴く。ヴァン・モリソンミック・ジャガーが参加した傑作。

  • 1995年3月、前年に発表したアルバム『ヴードゥーラウンジ』をひっさげて、ストーンズが再来日した。高校生の時よりも経済的にも余裕ができ、東京ドームにこのライブを見に行くことができた。細かいことは覚えていないが、高校生の時まぶしかった友人に一歩近づけた、と思いうれしかった。

  • 2001年 ミック・ジャガーのソロアルバム Goodness in the doorwayを聴く。傑作。

  • 2005年 未発表音源を集めたRarities 1971-2003を聴く。シカゴブルースの雄、Muddy Watersの「Mannish Boy」が熱い。

  • 2006年3月、『A bigger ban』ツアーでストーンズがまたまた来日した。この頃栃木県で仕事をしていたこともあり、埼玉スーパアリーナまで見に行くことができた。ステージが前進する仕掛けがすごくて興奮したことを覚えている。ミック・ジャガーのパフォーマンスの運動量に腰を抜かした。還暦をすぎたジジイのそれをはるかに超越していた。そしてブルース・フィーリングにあふれたMidnight Ramblerが素晴らしかった。東京ドームのライブの数倍もこちらの方が良く記憶に残った。

  • 2016年Blue and Lonesomeを聴く。ブルースに回帰したカバー集。新曲の録音中に飽きてきたのでブルース・ナンバーをやっている内にできあがったらしい。

  • 2019年4月、ミック・ジャガーが心臓弁膜症の手術を受けた。ツアーは一時延期になったらしいが、治療を終えまた再開したらしい。いつまでも元気に、カッコいいブルース・ハープを聴かせてほしい。

  •  最後に今年見てきたEXHIBITIONISM ザ・ローリング・ストーンズ展について。ここで紹介されていたエピソードで気に入ったものを記憶の新しいうちに残して、この回顧録の締めとしたい。

  • ハーモニカ レッスン

  • 俺は昔よくアレクシス・コーナーのライブに行っていたが、彼のバンドにはシリル・デイヴィスというハーモニカ・プレイヤーがいたんだ。俺は当時18歳ぐらいで、シリルに話しかけてみたんだ。そのときハーモニカの教訓本なんてなかった。

    ミック 『ハーモニカ』の吹きかたを教えてほしいんです。

    デイヴィス『すって吹きやがれ。わかったら失せろ!』

    これが俺のハーモニカレッスンだったよ。

    その後、ミックは独学でブルース・ハープの演奏を覚えたのだろうか。Midnight Ramblerを聴くたびに彼の努力と情熱が想像できてうれしくなる。

  • シカゴのブルースマンに敬愛されるストーンズ

  • バディ・ガイ

    チェスのスタジオに現れたあの日以来、彼らはブルースを別のレベルまで引き上げたんだ。あいつらがこんなに有名になって、俺たちについてこんなにもいいことを言ってくれるなんて思いもしなかった。

    クラプトンやストーンズをはじめとして、イギリスのミュージシャンたちがブルースマンたちのキャリアをどれだけ後押ししてくれたか。そして素晴らしいのは、彼らがズカズカっとやってきて、『ブルースは俺たちが始めたんだ』なんて言わないところだ。彼らはいつも真実を語ってくれるんだ。

ラグビーW杯観戦記

 2019年、日本中を熱狂の渦に巻き込んだラグビーワールドカップ。高校生の時、ラグビー好きの友人に誘われて国立競技場に大学選手権や日本選手権を見に行った記憶がある。ラグビーをじっくり見たのはそれ以来だった。細かいルールはわからなくとも、予選リーグでの選手たちの奮闘は記憶に残るもので、心に響いた。

予選リーグをTV観戦していた頃、まさかRWCを現地観戦できるなど夢にも思わなかった。二つの奇跡が重なって、味の素スタジアムで開催された10月19日の決勝トーナメントの一戦を見に行くことができた。一つはチケットを予約していた東京に住む兄から同行者の都合がつかなくなり、その代打に誘われたこと。一つは日本列島を襲った台風19号の被害で、大月〜八王子間の交通が遮断され会場にたどり着くのは困難な状況だったが、当日の昼に奇跡的に中央道が開通したこと。

 八王子で車を泊め、京王線に乗った。飛田給の駅で降りたのも、味の素スタジアムに入るのも初体験で新鮮だった。駅を降りるとアイルランド人たちがわんさといて、盛り上がっていた。これがワールドカップか。ニュージーランド VS アイルランド。世界最強と称されるオールブラックスは強かった。世界最高峰の闘いを体感できたし、1時間半ぐらい並んで、素敵なキャップもゲットできた。TV観戦では味わえない、お祭りが体感できたのはこの上ない幸せだった。2019年の鮮やかな記憶。

街のサッカーチームのこと。

 今年、街のサッカーチームは得点力不足を解消し、J1昇格を果たすため限られた予算の中で、FWをたくさんそろえた。J1で得点王の実績を持つウタカ、昨年怪我さえなければ小瀬のヒーローだったバホス、そして甲府の太陽ドゥドゥ。金沢から万能型FWの佐藤洸一、そして怪我で長期離脱していたゾノ。これなら得点力が倍増してJ1昇格できそうだな、と期待に胸が踊った。しかし、現実はそんなに甘くなかった。自動昇格まで勝ち点8が足りなかった。良くも悪くもFWウタカと心中した1年だった。ウタカは20得点と目に見える実績は残してくれたが、昇格の原動力となるほどの爆発力や安定感が足りなかった。バホス。怪我が多く、メンタルにも問題があった。岐阜に移ってもその能力を生かせなかった。佐藤洸一アディショナルタイム金沢戦でのPK、山形戦での同点ゴールは痺れた。できることなら、洸一の得点で勝つ試合があれば良かった。ゾノ。怪我から復帰後の活躍はめざましかった。終盤の追い込みがかけられたのもゾノがいたからだ。プロの世界、特にFWは実績がすべてで、点をとらないと契約に直結する厳しいお仕事だ。皆、明日はどうなるかはわからないが、それぞれの持ち場で輝いてくれることを願っている。

 今年のベストの試合を一つ挙げるとすると、J1参戦プレーオフの徳島戦だ。後半開始2分でレッドカードによる退場者を出し、10人で点を獲って勝たなければならないところまで追い込まれた。あのタイミングでレッドカードをくらって苦しくなったのは個人だけの問題ではなく、チーム一年の総括であったと思う。素人目に見てもアラーノはファウルが多くて不安だったし、後半開始からラッキー・ボーイのゾノを投入していれば結果は違ったかも知れない。肝心のところでツキに恵まれなかった一年だった。しかし、残り時間選手たちが勝利だけを目指して奮闘している姿は確かに心に響いた。何よりも、最後の最後までドキドキさせてくれたサッカーチームに感謝している。

 来年も厳しいシーズンが待っているが、FWがかみ合ってチームが上昇してくれることをひたすら祈念している。そして、総合球技場の話が白紙にもどろうが、予算が少なくなろうが、カテゴリーがどこだろうが、何事もなかったかのようにホームの小瀬にむかうのだ。

2019年のベスト

今年良く聴いた曲。

『シャンプー/アンルイス他』

今年、竹内まりやのベスト盤を聴く機会があった。その中で特別耳に残った素敵な曲がシャンプー。元々、山下達郎が1979年にアンルイスに提供した曲らしい。康珍化氏の詞もいい。アンルイス、山下久美子、それから山下達郎のセルフカバーバージョンを繰り返し聴いた。どれも素敵なのだが、山下達郎のヴォーカルが情感があって一番好きだ。

『Strasbourg Saint Denis/ ロイ・ハーグローヴ

ロイ・ハーグローヴ。多くのジャズレジェンドと共演している人気トランペッターだが、改めて良く聴くようになったのは昨年49歳の若さで亡くなったのを知ってからだ。Strasbourg Saint Denis - Live at the New Morning 2007 が気に入って繰り返し聴いた。ちょっとツイてない時もこれを聴いているといいことがあるような気がする、そんな素敵な曲だ。一度、生で演奏を聴いてみたかった。

『茜さす 帰路照されど…/椎名林檎

椎名林檎はデビューの頃から耳にしているのだが、当時はピンと来てなかった。昨年20周年だったらしく初期の音源を聴く機会があったが、そのクオリティの高さになぜかこの年になって心に響いた。

『拝啓、ジョンレノン/真心ブラザーズ

歌詞がイイ。ジョンレノンを『ダサいおじさん』『バカな平和主義者』と揶揄しつつ、『そして今ナツメロのようにステレオから流れてくるあなたの声はとても優しい』と締める。素敵なロックン・ロール。

 昔発表された知らない曲や、過去に耳にしていてもピンと来なかった曲が、今になって聴いて響くことがある。音楽って不思議だと思った。そして、こんな時いつでも過去の名曲にたどり着ける音楽配信ってイイな・・と思った2019年暮れだった。

おわりに

令和元年のクリスマス。なぜか今頭の中にはレゲエのリズムに乗せて佐野元春の『Christmas Time In Blue 』って曲が流れている。

愛している人も、愛されている人も。泣いている人も、笑っている君も。平和な街も、闘っている街も。   メリー・メリー・クリスマス! Tonight's gonna be alright !!

この素敵な企画に今年も参加できたことに、改めて感謝。来年も皆様にとって幸多き一年になりますように。

この記事は、2019 Advent Calendar 2019の第25日目の記事として書かれました。

2018年の ライブ鑑賞

今年もスキをみつけて、色々と見に行った。

1月 ロバート・グラスパー・トリオ

グラスパートリオは、2015年の横浜のBNJFで観て以来、2回目。ダミアン・リードのドラムと、グラスパーのピアノの息のあった掛け合いは最高です。2015年のCoveredも最高だったのではやくこのトリオの最新作を聴きたいものです。

2月 ホセジェームスと黒田卓也

黒田卓也のデビューアルバムにホセジェームスが参加してますが、友人関係だとか。

5月 マーカスミラー

ベースだけでなくバスクラリネットも上手なマーカス師匠。

7月 Chara

Blue Note Tokyoに7回通ったら、サプライズで無料で一回招待されたのでCharaを選んだ。

なかなか埋まらない丸源ラーメンのポイントシステムよりお得だ!

2017年のアルバムからの曲が良かった。

8月 矢野顕子トリオ

Will Lee, Chris Parkerとのトリオ、結成10周年。トレーラーは2017年のもの。

年以来2年ぶり2回目。小田和正ツェッペリンの曲をカバーするなど懐が広い。

2018年もステキなミュージシャンのライブが観れたのは幸せでした。

来年も良い年でありますように。

2018年のベスト

電子書籍と文庫本に関する考察

高校生のころ電車通学していた僕は、文庫本を携帯して待ち時間を過ごしていた。当時は司馬遼太郎吉川英治の長編歴史小説を愛読していた。下校時には、駅前の本屋に立ち寄り目的もなく面白そうな小説を探すのが楽しみであった。振り返ると、これまでの人生の中で1番本を読んでいた頃かもしれない。大学生になり、他の遊びに気を取られ、就職してしばらくは飯を食っていくための仕事の時間が優先され、文庫本を読む時間は減っていった。

2007年、山梨の西のはずれの小さな街で暮らし始めた。徒歩でいける近所にお気に入りの本屋があった。休みの日には散歩がてら本屋に出向き、カーグラフィックの雑誌を立ち読みし、気になった文庫本を適当に購入するのが至福の時間であった。新刊や話題作のディスプレイを眺めることも、好きな作家の古い本を端から探すことも楽しかった。

・・・しかし時代の流れは確実に本屋と文庫本を取り囲む環境を悪化させていった。インターネットの普及で、本屋では見つからない本を簡単に検索でき、注文できるようになった。スマートフォンなるものが開発され、本よりも多くの情報が簡単に手の中で閲覧できるようになった。

2013年の春、気がついたらお気に入りの本屋に閉店のお知らせがあった。しばらく悲しみのあまり途方にくれていた。お気に入りの本屋のない人生なんて、つまらないものだ。

2014年1月、皆が使っていないようなスマートフォンを購入することにした。通話には普通のケータイが最も実用的と考えている僕は、携帯会社に高い金を払うことに抵抗を感じていたこともあり、データ通信専用に当時まだ一般的でなかったSIMフリーの端末を選択した。今でも愛用しているこの端末は、文庫本に近いサイズで、電子書籍を使い始めるまでそれほど時間はかからなかった。初めて電子書籍に触れて感じたことは、文字も拡大できて読みやすいし、色々な本を検索してどこでも購入できるのでとても便利である。好きな阿佐田哲也や伊集院 静の小説やエッセイなどを数冊購入した。しかし、しばらくして気がついたことは、読了したのは「なぎさホテル」だけで、購入しっぱなしのものがほとんどだった。文庫本も購入後読まずに寝ているものが沢山あるのだが、電子書籍はなおさらその傾向が強い。なにしろ、電子データとして保存されたものは目につかないので購入したことを忘れてしまっているのだ。それから、スマートフォンには、SNSやらゲームやら読書に集中できない要素が満載だ。その点、文庫本はいい。そこに本があり、開いて読むだけなのだ。

2016年12月30日、電子書籍専用端末Kindle paperwhiteを購入した。買うつもりはなかった。

年末の特売をやっていたので、セールに飛びつくおばちゃんの心境でつい購入ボタンをクリックしてしまったのだ。すぐに新年の特売で池波正太郎鬼平犯科帳の全24巻セット発見し、迷わず購入した。その値段なんと3,999円。安い。思わぬ発見と池波の代表作・鬼平犯科帳を丸々手に入れた満足感に酔いしれた。電子書籍専用端末は、スマートフォンのように余計なアプリがないので読むだけが目的のシンプルなところが良い。これならいけそうだ、と感じた。・・・だが気がつくと、Kindleでは月に一冊だけの無料サービスで、本宮ひろ志の「俺の空」しか読んでいなかった。2年たった今でも肝心の鬼平犯科帳は一巻も読了していないのだ。冷静に考えれば、24巻丸ごと手元にあっても一巻ずつしか読めない。やはり文庫本のように、上下巻を一冊づつ読み進めていくのが性に合っている。

電子書籍とつきあい始めて数年が経過し、今感じていることは、僕には小説やエッセイを読むには文庫本がしっくりくる。それは、思春期の読書のスタイルがベースにあるのは間違いないが、なにより一冊に集中できる文庫本のシンプルさがいいのだ。良い小説は本棚に並べておいて、いつか子供たちに勧めることもできる。スマートフォンは便利だが情報が氾濫しており、気が散ってしまう。常に電池切れを気にしないといけない。ただ、電子書籍の優れたところもある。購入後たまってしまいがちな車関係の雑誌などを電子書籍で購入し、気が向いたときに目を通すのにはよい。それから時に気になるグラビアアイドルの写真を見たいと思う。そんなときにも電子書籍が良い。いい年になったので、高校生の時のように、グラビア写真集を本棚に並べておくことはできないのだ。

今年、山本周五郎の没後50年になるらしい。ラジオのニュースで、77年ぶりに未発表原稿がみつかり文庫で発表されると聞いた。それから間もなくふと立ち寄った目黒駅の本屋で目にした文庫本の「死處」、新しい出会いを直感して迷わず購入した。これまで縁がなかった周五郎の小説を手に取って読んだ。8つの短編だが、どれも人間の生き様を描いた味わい深い作品で余韻が残った。年末になり、代表作「樅ノ木は残った」(上巻)を読み始めている。今年一番の出来事は、山本周五郎の小説との邂逅だったと確信している。

年末、月に2回の出張で利用する東京の通勤電車を見渡すと、スマートフォンを眺めている人が大半で、文庫本を手にする人は圧倒的に少ない。スマートフォンの登場は、世の中の読書の機会を奪っているように感じている。かくいう僕もSNSやゲームに気を取られてしまっている時間が増えた。来年は、電車のなかでスマートフォンを眺めることよりも文庫本を読む時間が多くなることを目標にしたい。しばらく、周五郎の小説を読んで、息抜きにKindle鬼平犯科帳を読み進めるのだ。

ー歴史を目撃した話

・5月26日、街のサッカー選手たちと上野監督(小瀬)

 今シーズン、街のサッカーチームはスタートダッシュに失敗し、4月末に監督が交代するという最悪の事態にみまわれた。この緊急事態にはるばる山口から単身やってきた上野監督は「全員攻撃全員守備」を合い言葉にチームを活性化させた。就任後、1分3連勝で迎えたホームの一戦。その日、選手たちは首位を走る大分を相手に開始わずか15分で4点を奪い、一気に点を獲ったJリーグ記録を易々と塗り替えたのだ。

https://www.jleague.jp/news/article/12182/ 

現地小瀬のサポーターは、誰もが日本サッカー史上の最初の体験者として、その新鮮さに高揚し、昇格を確信した。・・・だが現実はそんなに甘くなかった。かつて2012年に優勝した時よりも、J2リーグははるかに底上げされていることを痛感したシーズンだった。それでもこの歴史的な一戦を確かに現地で見届けた。来シーズンも厳しい闘いが予想されるが、どんな結果が待っていようとも、何事もなかったかのように小瀬のバックスタンドに向かうのだ。また新しい歴史を見届けるために。

 

・9月5日、小瀬、ルヴァンカップ 中山 陸(中央線内)

 その試合を、電波が途切れ途切れとなる出張帰りの中央線特急のなかで見た。J1クラブ相手に、自らゴールを決め、素晴らしいスルーパスのアシストも決めた。その輝きを確かに見届けた。クラブで活躍し、いつか世界に羽ばたく選手であることを確信した。

・9月28日、ナゴヤドーム 岩瀬投手(スポーツニュース)

 知多半島の先っぽの小さな港町で生まれ、幼少期を過ごした。物心ついた頃に、親戚の叔父に今はなきナゴヤ球場に連れていかれ小松辰雄投手や谷沢健一野手の活躍を見て以来、どこで生活していてもドラゴンズのことを気にかけている。長い歴史のなかでドラゴンズは今、低迷期に入っている。史上初めて6年間連続Bクラスに沈んでいるのだ。そんなファンの傷心を癒やしてくれる凄い記録が達成された。黄金期を支えた岩瀬投手が前人未踏の1000試合登板を果たしたのだ。もうこの記録を破る選手はでないだろう。岩瀬投手が引退し、一つの時代が終わった。これから、新生ドラゴンズの浮上を期待しないで見守っている。

http://npb.jp/bis/history/ltp_g.html

 かれこれ25年、朝飯をとるかの如く、馬券を買い続けている。儲けようと考えていたらここまで続かないだろう。たぶん、競走馬とその関係者が紡ぎ出す筋書きのないドラマを、小遣いをはたいて追いかけているのだ。今年、一頭のアイドル登場に心を奪われた。アーモンドのようなつぶらな瞳を持つ、3歳の牝馬だ。彼女は史上4頭しか達成していない三冠牝馬を易々と獲得し、実力馬が集結する大レースで、2分20秒6という世界レコードでぶっちぎった。それだけの激走後に、つぶらな瞳を輝かせながら平然と歩いている姿にもう一度心を奪われた。

番外編  4月7日、サトミキにあった話(小瀬)   

 その日、いつものように通っているスタジアムのバックスタンド入り口に向かった。階段を上ると、はくばくのユニを着たかわいい子が立ってこっちを見ている。誰だろう?とスタンドに向かおうと通りかかると、笑顔でハイタッチのお出迎え。予想もしていなかったのでドキドキする間もなかった。・・・普通アイドルは人目につくメインスタンド側にいるはずだから。それからサトミキのことを色々と調べた。グラビアも見た。NHKのW杯番組でキャスターを務め、あまり評判が良くなかったようだが、そんなことは関係ない。ステキな笑顔。思いだしてからドキドキした。たぶん、電子書籍で写真集を買ってしまうだろう。

ー2018年のマイベスト

ベストオブ2018というと、どうしても今年購入した愛聴盤を挙げてしまうのであった。

https://realfinelove.goat.me/6FKeS0lZ

  • 黒田卓也 2月にライブを見た。初めて日本人トランペッターをカッコイイと思った。2014年のデビュー盤だが今年の新しい発見。

  • マーカスミラー かれこれ30年ぐらいマーカスの関わる音楽を聴いている。前作のRepriseで収録された「Preacher's Kid」、Take 6のハーモニーが加わりスピリチュアルな感じがとても良い。

  • 矢野顕子 年末に発売された。今回も傑作。The Yellow Monkeyの「パール」が出色の出来だと思う。矢野のピアノをバックに二人のヴォーカルが融合する佳曲。今年のベスト。

ー終わりに

筆無精の私ですが、このステキな企画に参加することで、1年を振り返って文章にしようという意欲がでることに気がついたのです。感謝。2019年も皆様にとって幸多い一年でありますように。

2017年のライブ鑑賞

音楽配信全盛の時代ですが、生で演奏をみる楽しさは格別です。今年生で観たライブの回想を。

マーカスミラー

マーカスを聴くきっかけは高校生の頃出会ったデビッド・サンボーン。サンボーンの全盛期作品にはほとんどマーカスが参加しており、無意識に聞いていたわけですがマーカスを本格的に好きになったのは1994年のサンボーンのリーダー作『Upfront』からと思います。それから1996年のマーカスの『Tales』でその格好良さにノックアウトされました。今回2012年のビルボードライブでの公演以来5年ぶりのライブ、やはり生で聴くマーカスの演奏は痺れました。

ロバート・グラスパー・エキスペリメント

グラスパーはいま一番ヘビーに聞いているミュージシャンの一人。2015年、記念すべき第一回Blue Note Jazz Festival in Japanで初めて聴いたのがきっかけ。トラディショナルなジャズとR&B/Hip Hopの境界を自由に行き来する革新性が最大の魅力で、BNJFではグラスパー・トリオとして演奏。ダミアン・リードのドラミング、グラスパーのお茶目さにやられました。またこの年のCoverdは個人的にはグラスパーの中でもベストアルバム。今でもこのメンバーのトリオが一番好き。ここではエキスペリメントとして演奏。Bill Withersの"Lovely day"が聴けただけで満足です。

Blue Note Jazz Festival in JAPAN 2017

2017年に3回目の開催予定だったBNJF、今回はヘッドライナーにDonald Fagenをフューチャーして大々的にプロモーションをしていましたが、直前になってFagenの体調不良により全面中止となりました。他にカマシ・ワシントンやグレゴリー・ポーターなど新世代の旗手が来日予定でそれだけでも期待値MAXなのに、まさかの中止。個人的にはこの判断は今でも解せません。多分、他のミュージシャンを楽しみにしていたファンのフラストレーションはMAXだったと察します。(どちらにしても外せない用事が入り行けなかったのでチケット払い戻しなど直接の被害がなかったので、とやかく言うことではありませんが。)

斉藤和義

斎藤和義、2000年代前半から愛聴してます。山梨公演は3回目ですが、全ていっているような気がします。山梨学院中退、石和のホテルで呼び込みのバイトをしていた話など、MCには毎回笑わせてもらっています。代表曲『歌うたいのバラッド』のバンドバージョンの最後のギターソロはライブのハイライトの1つですが、今回は弾き語りツアーということでキーボードでの独演も素晴らしかった。

David Sanborn

高校生の頃から愛聴しているサンボーンさんと、1995年の山中湖ジャズフェスティバル以来22年ぶりに再会。それだけで2017年は最高だったと思います。22年前の記憶が鮮やかなせいでしょうか、さすがに年取ったな・・と感じましたが、新しいメンバーを引き連れての演奏、素晴らしかった。グラミー受賞作のDouble VisionからのMaptoなど懐かしいバラードから、バンドメンバーのファンキーなナンバーまで満喫。いつまでも元気にゴキゲンな演奏を聴かせて下さい。それにしても、マーカスとサンボーンを同じ年に観ることができたのは奇跡です。

2017年の鮮やかな記憶。2018年も新しい出会いがありますように。

2017年のベスト

音楽のこと。

僕が音楽の探求を始めたのは、アナログレコードとComapct Disc (CD)の丁度移行期のころであったと思う。通学の帰り道の駅のレンタルレコード屋では、普及し始めたCDと共にアナログレコードもレンタルできて、わざわざ目立つアナログレコードを抱えて通学していた記憶がある。高校生のある日、初めて買ったのはブルース・スプリングスティーンのアナログレコードだった。ジャケットの存在感、レコードの針を落とすときの高揚感は忘れられない。すぐにCDの時代となり、レコードショップでアナログレコードを目にすることはほとんどなくなった。

 1990年代〜2000年代前半はCDの時代であったと思う。レコードショップを目的もなく物色するのが好きだった。山梨で暮らすようになり、国母のあたりにあった大きなレコードショップに良く立ち寄った。輸入版のCDが豊富にそろえてあり、気になったアルバムを気ままに購入し、新しい音楽と邂逅することはとても楽しいことであった。インターネットの普及とともに、通信販売でCDを購入することが普通になった。店頭で在庫を切らしている物も、マニアックな作品もインターネットですぐに検索できてボタン1つで宅配される。こんなに便利なことはない。・・・しかし気がつくとレコードショップは街から消えていった。便利なことを手に入れると、必ず失うものがあるのだということを知った。

 さらに時代は変わって、音楽配信やストリーミングの時代になった。音楽配信は便利である。発売したばかりの新譜が、自宅のデスクで試聴できる。昔、好きだったミュージシャンの古いカタログも、聴きたくても買えなかったアルバムも聴くことが出来る。月額1000円程度の料金で無限のカタログが聴き放題で、なんて素敵なサービスなんだろう。しかしこの便利さに引き替えて失ったものは大きい。

アナログレコードやCDには音楽以外の価値がある。ジャケットの雰囲気、ライナーノーツ。自分が好きなCDを、友人や好きな女の子に貸してあげる。ドキドキする。

配信で得た音楽には、いつでも聴けるのに存在感を感じることができない。ドキドキがない。

昔聴いた好きなCDが棚にあったはずだが、どこにしまったかわからない。今日は見つからなかったが、気が向いたらまた探してみよう。ある日、棚の奥から好きだったCDを発見して聴き直す。なぜか、そのCDを購入した時代のことを思い出す。

『欲しいものがすぐに手に入る』ことは便利なことではあるが、幸せなことではないのだと感じる今日この頃である。

そんなわけで、今日もapple musicとかspotifyにお金を払って新しい音楽を物色しているのだが、本当に聴きたいと思う音楽はお金を払ってCDを手に入れるようにしている。できる限り、生のライブも観に行こうと思っている。ラーナーノーツを読んで勉強する。音楽配信でいつでも聴けるのにわざわざ購入したものは、自分のベストである。いつか思い立って探して聴くこともあるだろう。

2017年に購入したもの、お気に入り。

土岐麻子『Pink』

土岐麻子のポップスが好きだ。ジャケットを見て、なぜかサイボーグ003を連想した。

Gregory Porter『Take Me To The Alley』

ヨコハマのジャズフェスティバルにやってくるという情報でグレゴリー・ポーターを知った。なんでもマービン・ゲイダニー・ハサウェイに影響を受けたシンガーらしい。聴いてみると素敵である。ダニーの娘、レイラ・ハサウェイとのデュエットは絶品だ。年齢不詳なたたずまいだが、同世代の人であることも知った。

Van Morrison 『Roll with the punches』

紙ジャケットである。ジャケットの外し具合がイイ。ヴァンさんの歌唱はいつ聴いても濃いが、さらに本作はジェフ・ベック爺とのからみが6曲もある。ヴァンのヴォーカルとベックのギターのからみ、これはもう最高なのだ。

Kamashi Washington『harmony』

この人もヨコハマのジャズフェスティバルに来るはずだった。チャンスがあればこの人のライブに行くのが当面の目標。

矢野顕子『Soft Landing』年末に購入したこのCD, おそらく今年のベストだろう。ライナーノーツを読んで、O.P.Kingというバンドの存在を知った。『悪いときは過ぎたよ、今からもっと良くなっていくんだ・・』っていう印象に残るフレーズ、唯一無二だと思いマス。『矢野顕子忌野清志郎を歌う』と同じぐらい素晴らしい。

番外編。

10月1日、好きだったRock'n Rollerトム・ペティさん危篤の情報を知った。

年上のボブ・ディランも元気だし、もっと不健康そうなキース・リチャーズだって健在だ。脳卒中を患ったニール・ヤングだって活動している。戻ってこいと祈った。

久しぶりにTom PettyのCDを引っ張り出した。『Here Comes My Girl』という曲が好きだった。昔好きだったRock'n Rollerが亡くなることは、大事なものを失った喪失感を覚える。冥福を祈る。

街のサッカーチームのこと。

山梨県の西のはずれにある小さな街で暮らし始めて10年が経過した。街には、予算が少ないなかビッグチームに立ち向かうサッカーチームがいる。その姿に共感を覚えていつからかスタジアムに応援にいくようになった。今年も8試合、ホームの小瀬での観戦に行けた。色々と印象に残る試合が多かったが、その中でも大事な試合を回想したい。

10月29日、ヴィッセル神戸戦。元ドイツ代表のポドルスキーがやってくるはずだったが、累積警告で出場停止。代わりにかつて甲府で活躍し、オランダから久しぶりにJリーグに戻ってきたハーフナー・マイクの先発濃厚だった。あいにく台風直撃という観戦には最悪のタイミングであった。こんな台風の中、観戦にいくバカがいるのか?という程の荒天であったが、チームは秋に入ってビッグチームに連勝し、春にも勝利していた神戸が相手、ここを勝てば目標であるJ1残留に向けて大きく前進できるという希望を胸に覚悟を決めて向かった。小瀬についた直後から雨足は強まり、どしゃ降り状態となった。こんな状態で負けて帰れば無駄骨だな・・と思いつつ、バックスタンドで雨に打たれ観戦した。

チームは良く奮闘していた。前半18分の救世主リンスのファインゴール、後半47分の新戦力小出と高野の活躍で二度の勝ち越し。絶対勝って帰るぞ!と思ったのもむなしく、前半33分、後半86分に赤子の手を捻るようにマイクにヘディングを決められ、2-3で敗戦した。キーパーとセンターバックのポカミスによる失点があったものの、マイク一人にやられた・・という試合。入場者数は4,692人、今シーズン最低だった。

12月2日。シーズンが終わり、街のサッカーチームは奮闘むなしく降格が決まった。マイクの今シーズンの成績を確認すると、9試合出場、小瀬のみフル出場、2ゴールはあの日あげたヘッド2発だった(表)。

思わず呟く。「ユーは何しにニッポンへ?」

 年末、街のサッカーチームは再起に向けて動き出している。最終戦で魂をみせてくれた選手たちが来年も闘ってくれそうだ。少し気持ちが落ち着いてから思った。マイクもプロだ。かつて活躍した小瀬で健在の姿を見せたことは最高のパフォーマンスだったに違いない。それから、マイクに食らった2発は「甲府の皆サン、目を覚ましてください!!」というゲキだったのだ、と。5年間、総力戦でしがみつくように残留して来たが、J1で生き残っていくためにはこのままではいけないのだと思う。マイクに食らった2発とこの試合の意義をもう一度考え直さないといけない。観客動員が伸びていないことは気がかりだ。となりの松本のチームのように、もっと観客動員を増やせないのか? そんなことを考えさせられた神戸戦は、今年観戦した試合のなかでベストの試合だった。

降格すると、クラブの資金が減る。これまで協力会員でしかなかったが、来シーズンは早々にクラブサポーター会員の申し込みを済ませた。少しでもチームの支援になりますように。マイクにくらった2発の意義を考えると自然にそういう気持ちになった。来年はもう少しホームの観戦に足を運びたい。

最後に。

この素敵なカレンダーに参加できたことに感謝!!

2018年も皆様に幸多い1年でありますように。

この記事は 2017 Advent Calendar 2017の25日目の記事として書かれました。